零れ落ちる前に。

その時々感じたことを、零れ落ちる前に。

RIDER TIME 仮面ライダー龍騎 EPISODE3「Alive A Life」感想

3週連続公開された2019年版『龍騎』、早くも最終話。1月の「超英雄祭」で絶叫してからずっと心待ちにしていましたが、終わってみればあっという間ですね。もうちょっと見たかったと思いつつ、見たいものはしっかり見せてくれたので、満足感でいっぱいです。ありがとう。

 

今回注目したいのは、原典の「焼き直し」。第3話はこの点が明確に意識されて作られていました。真司と蓮、浅倉とゴロちゃん、そして北岡先生。原典の最終話でぶつかった2組が、16年越しに火花を散らし、あの時とは異なる運命を辿った。役者さんも台本を読んで納得したと仰られてましたが、私も今作に詰まった『龍騎』への「愛」に感極まりっぱなしでした。

 

 

俺と城戸の絆

今作で間違いなく一番意識されていたのは、城戸真司と秋山蓮を再び巡り合わせるという点でした。最終回、変わった世界にて花鶏から出てきた蓮と、対峙する真司。記憶が無いながらもつっかかりあった2人。あの切ないエンドは『龍騎』という作品における美学だと思っているし、この先戦いの記憶を持った2人が交わる事は無いと思っていました。しかし、今回明確に「その後」を描くという禁忌に。『ジオウ』が絡んでいるからこそ可能な「歴史改変」に複雑な思いを抱きながらも、かつて真司の死を看取った蓮が真司を庇うという真逆の展開には、熱いものが...。

 

正直言うと、「俺と城戸の絆だ!」はやり過ぎだと思ったし、蓮ならこんなストレートな言い回しは使わないよなあと思っています。けれども、蓮が真司に対して「またくだらない喧嘩をしたいな...」と望み、真っ直ぐに伝えるという展開は、秋山蓮が17年間心の奥底で抱いてきたであろう重い「後悔」を感じて、泣かざるを得なかったんですよね。その「後悔」をようやく清算することができた。結局蓮は死んでしまったし、悲しい結末ではあるのですが、どこか「救い」を感じることができたのは、2人がようやく心を通じ合わせることができたからではないでしょうか。

 

「きっとまた会える」という思いを具現化するように、空へと飛んでいく龍騎とナイトのアドベントカード。『金色のガッシュ!』最終回で魔本型の手紙が空へと飛んでいくシーンがありましたが、それを思い出すような爽やかな〆です。こんな前向きな結末が『龍騎』に訪れるとは今まで思いもしませんでしたし、このラストカットを見た『龍騎』オタは...浄化された.......。ジオウとゲイツが彼らの力を使ってオーディンを撃破した所も併せて、真司と蓮の絆は熱々です。

 

それにしても、真司が蓮を看取るシーンは何度でも見ていられる...。須賀さんと松田さんの感情が高まりすぎてな。きっと短い撮影時間だったというのに、当時の最終回と同様、いやそれ以上の掛け合いを引き出してくれてもう何も言うことがありません。

 

「今度はお前が生きろ」

「おい、死ぬなよ.....。蓮!おい蓮!!」

 

と、完全に最終回の2人を真逆の立場にした台詞も素晴らしかったし、頼みとして託した願いが、絵里の幸せを見てほしいというのも蓮すぎたし、

 

「俺たちまた会えるよな?戦いの無い世界で」

「俺たちはまた会う。そしたらまた、喧嘩だろうがな...」

「ああ。また、喧嘩しようぜ。思いっきり、くだらない喧嘩をな」

「くだらない喧嘩か。楽しそうだ......」

 

という、正直な2人の掛け合いには深い「愛」を感じました。あの戦いを覚えている2人だからこその言葉。再び「後悔」が無いようにと、思いを伝えきる蓮の姿、そしてそれを受け止め前へと歩いていく真司のカット。2019年に『龍騎』をやる意義は、これだけで十分すぎるほどあったと思います。

 

しかし、2人がまた出会うとしたらそこは戦場なんだろうな......。円環の理に囚われた2人の運命、ほんっとうに切なくて悲しいのですが、だからこそ愛おしく大事に思える。『龍騎』の旨味は、戦いで紡がれる彼らの歪な人間関係にこそあると思うのです。

 

あ、それと、当時実現することのなかった本気の真司vs蓮が、リュウガvsナイトという形で実現したのも熱い展開でしたね。2体のモンスターが上空を駆ける中、剣と剣でシンプルにぶつかり合う2人。そして〆はファイナルベント。結果的に蓮の敗北に終わる点、やはりリュウガは強かったですが、この戦いをしっかりと映像に残してくれたのは『龍騎』オタにとってめちゃめちゃ嬉しかったです。

 

先生の意思とゴロちゃんの過ち

さて、もうひとつの因縁がゴロちゃんと浅倉。最終回、先生を装って浅倉と戦い散ったゴロちゃんが、今度は変身姿を見せて真正面から浅倉に挑みました。「この時を待っていた!」と浅倉を叩くゴロちゃんはちょっと面白かったけど、屈辱を噛みしめながら浅倉を「先生」と呼び、隠してきたのを思うと、健気すぎてつらいです。

 

ゾルダ対王蛇のカードが再現されたわけですが、その結果は.....またしても敗退。弱っていても破れない王蛇、あまりにも固すぎます。というか、ゴロちゃんがゾルダの力を使い切れてないとは思うんですけどね。ファイナルベント撃っても良かったじゃん。

 

そして北岡先生ですよ。ゴロちゃんは先生の意思を継いできたと言っていましたが、浅倉と再戦するのは果たして先生の意思なのか......。彼が先生の思いをくみ取り切れてない感じが悲しかったですね。先生はゴロちゃんを戦わせたいとは思っていなかったと思うんだ。そしてその判断が、浅倉の戦闘欲を満たしてしまった皮肉。むしろ、最終回以上にやらかしてしまったゴロちゃんでした。しんどい。

 

そうして生き残ってしまったがために、蓮と真司の場に現れた浅倉。蓮に致命傷を与える役割を、今度は彼が持っていました。生身で武器を持つのは地味に初、というか「ミラーワールド内で生身でいても消えない」という今回の設定が無いとできない技ですね。設定の妙で色んな「新しい龍騎」を見られたのも、今作の大きな成果でした。

 

 

『ジオウ』における『龍騎

原典の「焼き直し」は今作にてたっぷり味わえましたが、肝心の本筋の方は......ちょっと微妙でしたね。サラさんも達也も乗り切れなかった。

 

まず、サラさんについて。ライダーバトルを展開する必要性があったのか?というところにしこりが残ります。結果的に達也以上に命を奪っている気がするし、オーディンへの対抗策は「『龍騎』のライダー」しかいないとはいえ、何だかな~という印象です。

 

また、どうやってミラーワールド内に彼らを取り込んだの?とか、命を与えるギミックは何?とか色々疑問だらけ。まあオーディンがやったのは間違いないんでしょうけど...。オーディンも結局何者かわからずじまい。「結衣...」って呟いてたけど神崎では無いだろうし、神崎の残留思念とかかな。

 

達也についてはタイムジャッカーの仕込みなんでしょうけど、肝心の仕込み人が現れなかったし、結局サラさんは死んで何も救われなかったし...。撃破後のフォローは特に無かった辺り、彼らの物語よりも真司達の物語を優先したかったんでしょうね。まあそりゃそうか。少しでもソウゴからのフォローがあったら印象は変わったかもしれません。

 

オーディンの撃破についても、熱いとは思いながら取ってつけた感が。無敵のラスボスだからこそ、「あ、普通に倒せちゃうんだ...」と拍子抜けでした。これなら別にオーディンを最後の敵に据えなくてもよかったような気がします。

 

などなど愚痴っぽく書きましたけど、龍騎vsアナザー龍騎は面白い組み合わせだったし、蓮と真司の絆を込めたWサバイブの必殺技は『ジオウ』だからこそできることだし、柴崎監督の熱がこもった演出の数々には盛り上がりました。バトルシーンの随所に「愛」がこもっている。当時助監督だった柴崎さんだからこそ作る事ができた作品だと思います。

 

そして『ジオウ』によって改変された『龍騎』の世界。ソウゴの物語が終わる時には、きっとウォッチはそれぞれの持ち主に帰っていくことでしょう。龍騎とナイトのウォッチがそれぞれの手元に戻り、歴史が元通りになったら、彼らの記憶はまた消えてしまうのでしょうか。そして蓮達は生き返ることができるのでしょうか。こういう部分が『ジオウ』の「歴史改変」が持つ旨味ですし、結末を迎える時のフォローがどうなるか気になるところですね。

 

戦いの記憶が無く接点を失った世界と、戦いを乗り越え記憶を保った今の世界、どっちが彼らにとって幸せなんでしょうね......。

 

 

 

あ、あと最後にひとつだけ。蓮のゲイツコスプレはやり過ぎだ(笑)

 

 

仮面ライダー龍騎 Blu-ray BOX 3<完>

 

以上、2019年版『龍騎』3話感想でした。いやああっという間だった。短いながら、贅沢すぎる時間でした。白倉P、柴崎監督、敏樹さん、スタッフの皆様、松本梨花さん、新キャストの皆さん、そして須賀さん、松田さん、一條さん、高野さん、萩野さん、弓削さん。また『龍騎』の物語を創ってくださって、本当にありがとうございました。

 

しばらくはビデオパスで何度も見返そうと思います。『アギト』も『剣』も見返したいし、やることたくさん。うれしい悲鳴です。ライダー見続けてきてよかった。