零れ落ちる前に。

その時々感じたことを、零れ落ちる前に。

仮面ライダージオウ EP44「2019:アクアのよびごえ」/EP45「2019: エターナル・パーティ」/EP46「2019: オペレーション・ウォズ」 感想

 

アクア!エターナル!!白ウォズ!!!と、レジェンドが続々と登場する中、物語の核心へと迫っていく『ジオウ』。EP44~46は「失われた可能性の世界=アナザーワールド」という概念まで登場し、カオス極まりなし。お祭り感とシリアスが同居した終盤戦、「この番組はどこへ向かうんだ!?」と動揺しながら鑑賞しました。

 

何気にこれまで登場しなかった、悪のレジェンドライダーズも大集合。『ディケイド』では海東のせいでわんさか登場していた記憶がありますが、『ジオウ』はライダーの物量で押すタイプの番組じゃないと思うので、かえって新鮮。幽汽、G4、レイ...と、劇場版の記憶と共に蘇るライダー達に、思い出に浸る3話でもありました。

 

 

 

 

 

 

 

湊ミハルについて


『MOVIE大戦MEGA MAX』より意外なレジェンドとして登場した、仮面ライダーアクア/湊ミハル。『オーズ』の歴史が消えた今、何で彼は記憶を保ったまま未来から現れたのか...。うーん、考えれば考えるほどわからない。また、2050年代からやってきたということですが、どういう流れでゲイツツクヨミを助けに来ることになったんでしょうか。誰に頼まれたんだろう。鴻上会長?(ないです)


理屈はともかく、小心者の彼が映司くんの影響を受け、一人前に活躍してる様を見ることができたのは非常に嬉しいですね。映司くんへのリスペクトからか、「明日のパンツ」を握りしめ、勇気を振り絞っての変身。山口監督のアイディアみたいですが、毎回これを挟むことで彼の優しい人間性が強調され、キャラクターの良いアクセントになっています。喋り方のからっとした感じも映司くんの影響かな。

 

 

そんな彼の目的は、ツクヨミ(本名:アルピナゲイツを未来へ送り返すこと。オーマジオウの未来を潰すために過去へやってきた彼らの行動そのものが、実はオーマジオウを生み出しているんだ!というのです。何たる皮肉。せっかくソウゴと心を通わせ、未来を切り拓いていこうと心に決めていたのに。自分達の生きる世界である未来に影響を及ぼすとなると、当然2人は帰るしかありません。しかし、残りたいのも事実。

 

後述しますが、この迷いからソウゴに強く当たってしまったゲイツと、可能性の世界で本当の想いを吐露し続ける彼のシーンはかなり泣けました。魔王の未来確定ルートと言われた所から、彼の行動はエゴなのかもしれない。だけど俺はソウゴと共に生きる。そして必ずそのルートを断ち切ってみせる。そんな強い想いの表れに、私の心の白ウォズが号泣しました。嬉しいよ、我が救世主。

 


それはさておき、冬映画以上に物語へグイグイと絡むミハルくんは、アクアへと変身して大活躍。対アナザードライブ、アナザーディケイドと連戦善戦。特に対エターナルのドリームマッチは非常に見応えがありましたね!映画公開時期が比較的近い2大映画ライダーのバトルということで、監督の気合もひとしお。水中戦に持ち込むミハルくんは良い戦法でしたが、それに負けず劣らず対抗する死神のしぶとさよ。水も滴るイイ克己。水中で戦うライダーは最近あまり見ないので、貴重なバトルでした。

 

 

仮面ライダー×仮面ライダー フォーゼ&オーズ MOVIE大戦 MEGA MAX

 


ツクヨミゲイツを未来へ戻そうとしながらも、彼らの気持ちを尊重し、最大限に協力してくれたミハルくん。しかし、衝撃的な事に、ソウゴの前で命を落とすのでした...。レジェンドライダーが客演先で死亡するという、前代未聞の大事件。当然放送後は賛否が割れました。


私も彼の死にはなかなか複雑な気持ちで、賛とも否ともつけづらいです。彼がここで死ぬ必要性があったのかと問われるとNOだと思うし、一方でミハルくんの大一番として印象が残るから、キャラを大切にしてくれてるじゃんという意見もわかる。ただやっぱり、ここで殺すんだったらもっと準レギュラーな立ち位置だった方が良かったんじゃないかな...と、番組のバランスをも考えてしまいます。


しかしまあ、豪雨の中での壮絶な死という絵面はかなりショッキングで、スウォルツのあくどさと喪失の哀しみを際立たせる良演出。『エグゼイド』に「雨の日は何かが起こる」と教わってきたもんだから、「死」や「衝撃」と必然的に結びついてしまう。悪の権化に向かって絶叫するソウゴ、もとい奥野くんの演技は非常に素晴らしかったですね。今回のレギュラー陣の成長ぶりも凄まじかったなあ。

 

主役に看取られ、散っていく男アクア。ミハル君の活躍は二度と見られないかもしれないですが、叶うことなら再び現行ライダーと戦う姿を見たいです。あの強さと弱さを兼ね備えたヒーロー像が非常に平成ライダーっぽくて好きだな、と改めて感じる客演でした。

 

 

あ、退場といえばウールくんとオーラちゃんも。特にウールくん、あまりに救いが無さすぎでは...。こういう事になるなら、2人で共にスウォルツを裏切った方が絶対良かっただろうに。オーラちゃんには人の心が無いのかい。タイムジャッカー勢、最期まで物語の根幹にいそうでいない、フワフワした存在で終わってしまったのは勿体無かったです。

 

アナザードライブもといパラドクスロイミュードの人間態がオーラちゃんっていうのは好きでしたが。一方ウールくんは虫を顔面に付けられた過去しかない。救いをくれ。

 

 

 

失われた可能性の世界

別名、アナザーワールドと呼ばれる世界は、夢を諦めきれない者達の悔しさを媒介として生まれました。その性質をスウォルツは利用し、「本来死ぬはずだったライダー達」を続々と呼び寄せます。ソウゴの友達のアナザーワールドから、エターナルが生まれる原理はよく分かりませんが、たまたま生きてたんだよなということで。一方で、ゲイツを媒介として白ウォズが現れるのは筋が通っていて気持ち良い。

 

かつての映画の懐かしさや、時代感を引き連れて登場したダークライダー達。平成初期のG4と、比較的新しい風魔が並ぶ絵面は新鮮で痺れました。いいぞもっとやれ。その中でひときわ異彩を放ったのが、エターナル克己ちゃん。某動画主さんの作品でお馴染みになってしまいましたけど(笑)、まさかの登場に驚きです。相変わらず言う事為すことカッコイイ。

 

アクア戦も最高でしたが、一番の見所はVSダブルアーマー。作戦の一部として、ダブルのライダーにはダブルだ!とぶつけるのも良かったし、克己が翔太郎とフィリップに思いを馳せたのか、滅茶苦茶気持ちを乗せてマキシマムドライブを放ったのも最高でした。最後のサムズアップは「松岡さんやりすぎ!!」と思ったりもしましたけど、ソウゴに対しレジェンドの風格を見せつけたのは粋でしたね。仲間の元に行けたらいいな。

 

 

 

 

 

 

アナザーワールドを利用した白ウォズの作戦は、トリニティを使ってゲイツを強制送還し、エターナルの力を利用して世界を破壊すること。後者は無理がある気がしますが、トリニティの活用法は斬新で良かったです。当初はこの3人で絆の力!とか無理あるだろと思っていたけど、ここまでしっくりくるフォームになるとは。『エグゼイド』のマイティブラザーズといい、『ビルド』のラビラビといい、中間フォームの有効な活用劇が増えてきています。

 

その世界でゲイツが繰り返す実現したかった可能性とは。オーマジオウを倒した後の未来でも、友を亡くさなかった世界でもなく、ソウゴに想いを伝えることができた瞬間でした。EP45で、「お前のせいで最低最悪の未来が生まれた!」と感情をぶつけてしまったゲイツくん。その時、彼の本心ではないのだろうなとは思っていましたけど、その後に続く言葉は想像を超えた感涙もの。

 

「俺は、この時代で生きていきたいんだ。お前と一緒に、新しい未来を作っていきたいんだよ!」と叫ぶ姿は、ソウゴと感情をぶつけ合い、背中合わせで戦ってきたからこそ生まれたもの。直接伝えることは出来なかったけれど、この言葉を伝えられなかった後悔を胸の内に秘めていたんだな...と思うと滅茶苦茶泣けました。この2人の関係性が生むドラマは、最終回でも絶対にやってほしい。

 

 

また、ダークライダー扱いで現れた白ウォズが、味方となってくれた理屈も納得。彼が実現したかった可能性は、我が救世主を支えることだったんですね。実にウォズらしい。渡邉さんの演技の分け方も、中盤以上に上達していてナイスでした。

 

 

 

仮面ライダージオウ DXジオウトリニティライドウォッチ

仮面ライダージオウ DXジオウトリニティライドウォッチ

 

 

 

3つの選択肢

ツクヨミを取るか、己を取るか、オーマジオウの道を取るか。雨の中スウォルツから提示された3つの条件は、初見時「わかりづらいな」と思ってしまいました。こういう時って「お前に残された道はたったひとつ」じゃないんや。

 

「スウォルツの時間軸」という要素がぽっと出なので、「俺を倒せばツクヨミは消える」という言い分があんまりスッと入ってこないんですよね。最高最善の魔王になりたいという当初からの目的と合致しない要素と言いますか。この点割と不満げに語ってる中、前回記事のコメント欄に「あなただったらどういう設定を考えますか?」という中々難しい質問を頂いたので(笑)、折角だからこちらで回答してしまいます。コメ主さん、ありがとうございます。

 

 

といってもまあ、結論から言うと「夏映画のクォーツァー的な作戦を本編でやればよかったのでは?」というのが私の意見です。クォーツァーの作戦は、「平成を消したい」という要素を隅に置けば、縦軸で攻めるやり口なんですよね。

 

クウガ』から『ジオウ』までの世界がひとつの地球に集約しているとして、各時代の力を最新のライダーにまとめ、その力を根こそぎ奪う。そして魔王として君臨する。そんな敵に利用された偽者の王が、自分を見出して魔王を撃破し、最高最善の魔王として地球を救う。これまでの『ジオウ』を考えたら、この方がスッキリしたのではないかと。夏映画の「平成」が関係無いバージョン。オリジナルの意見じゃなくて申し訳ないですが...。

 

で、スウォルツはオーマジオウその人か、もしくは王の座を狙う第三勢力という立ち位置。前者ならソウゴを誘導し、楽して圧倒的な力を手にした狡賢い魔王として君臨できます。後者ならば、オーマジオウの未来に不満を抱いた彼が、タイムジャッカーやソウゴを利用して、王の座を獲得するという計画ができますね。どちらにせよ、『ディケイド』のような横軸を利用せずとも可能な展開。

 

 

私が『ジオウ』終盤の展開に何だかなあと思っているのは、この番組が始まった当初から、『ディケイド』との差別化を如何にするかという点に期待していたからなんですよ。確かに士くんがオーロラで時空を移動したり、「ジオウの世界」にやってきたかのような振る舞いをしたりする『ディケイド』要素が、10年越しに沢山活用されるのは嬉しい。この終盤の展開も、『ジオウ』と『ディケイド』に真っ向勝負をさせるためと言われたら、まあやりたい事はわからなくもない。

 

しかし、結局『ディケイド』の何でもありな設定に頼っちゃったようなのが、自分には残念に思えてなりません。『ジオウ』は『ジオウ』なりに積み上げてきた手法があったはず。その締めくくりが上手くできないから破壊者に任せよう!というのは、どちらも同じPが担当する作品だからといって、やっていいことなんでしょうか。

 

 

仮面ライダーディケイド Blu-ray BOX

仮面ライダーディケイド Blu-ray BOX

 

 

 

...などと愚痴りつつ、楽しんでいる自分がいるのも事実。この次のEP47のラストで描かれた雑魚怪人大集合の絵面と、それを見渡す『ジオウ』×『ディケイド』は絵面だけでも楽しくて。楽しみたいという気持ちと、イマイチだなという気持ちが共存したまま迎える終盤は、平成ライダーではよくあることです。何を今更、と笑っていられる自分もちゃんといることが救い。笑って見届けたいと思います。

 

EP47、EP48の感想を書き終えたら、自分の『ジオウ』感想戦もいよいよLAST。最後まで時代を駆け抜けるぞ!