零れ落ちる前に。

その時々感じたことを、零れ落ちる前に。

『SHOW BOY』乗船記。~ハロオタが色々あって『SHOW BOY』を観劇した話~

あらすじ

平井担が『SHOW BOY』を観劇すると知った私は、氏の起こした一大ムーブメントに乗っかりあれよあれよという間に『SHOW BOY』のチケットを手に入れた。ふぉ~ゆ~とはいったい誰なのか。『SHOW BOY』とはいったい何なのか。予備知識を全く入れず、真夏日の日比谷を闊歩し、シアタークリエという名の大海原へ飛び込んだ。2時間半にも及ぶ素晴らしい航海から帰還した私は、真っ先に日比谷の夕焼けをカメラに収め、漏れる笑みを隠さずに全力疾走するのであった...。越岡裕貴サァァァァァン!

 

 

 

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あらすじの補完は張本人作成のまとめを参照してね

 

 

 

ということで、ジャニーズ事務所所属のグループ・ふぉ~ゆ~がメインキャストを務める舞台『SHOW BOY』を観劇してきました。フォロワーの影響もそうですが、『眠れる森のビヨ』にお熱だった5月、たまたま見かけたフォロー外の方の「『森ビヨ』見た奴は『SHOW BOY』も見てくれ(意訳)」というツイートが印象に残っており、「あ、あの時の!」と思い出したのが購入の決め手です。購入といっても販売期間に間に合わなかったのですが、とあるジャニオタさんに譲っていただき乗船できました......優しい世界......。

 

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『SHOW BOY』に乗船することになった大元(?)、『眠れる森のビヨ』をTwitterで宣伝したらふぉゆ担の皆様が続々と予約してくださったらしい。なんてやさしいせかい...。

 

 

 

舞台も映画も基本内容をうっすらとしか知らない状態で観に行くタイプの人間なので、あらすじもキャストも知らないまま当日を迎えても無問題。いや、いつもは最低限誰が出演するかを知った状態で入りますが、今回はもはやしょこたんとふぉ~ゆ~*1くらいしかわからないというのに1万円を支払うギャンブラーっぷりを発揮しました。ただただTLの皆(と見知らぬふぉゆ担)のことを信じてました。結果、勢いよく夕焼け空を撮りヒャッホ~イと駆け出すにぎやかな人間に。ありがとう『SHOW BOY』。ありがとうふぉ~ゆ~!

 

観劇までの流れはこんな感じ。ここから『SHOW BOY』の初見感想に移ります。Show Must Go On!

 

 

※以下舞台のネタバレがあります

 

 

 

 

 

 

 

 

 

会場に入ると目の前に広がっていたのは豪華客船「SHOW BOAT」のデッキ。華やかな舞台セットと設定に忠実な会場アナウンスを開演前から摂取し、これは演劇というよりディズニーのショー的なやつだな、と気持ちを切り替えた。やがて流れ始めたBGMに合わせ、幾度目かの航海に臨むオタク達が手拍子を始めたので、私も従いリズムに乗る。暗転して幕が上がると始まるショータイム!オープニングで作品の世界観に引き込まれてたら、2時間半の航海を終えるまで一瞬だった。もっと欲しい。もっと欲しい!と興奮しっぱなしの舞台。通い詰めたくなる気持ちが大いにわかった。

 

まず私が惹かれたのは、各シーンで展開される豪華絢爛なパフォーマンスと役者・観客の一体感だ。歌、ダンス、舞台装置、目まぐるしい転換。マンパワーで展開されるショーはとにかく華やかで、2時間半という長丁場の舞台なのに最初から最後まで飽きさせない。そんな上質なエンタメを浴びながら、小刻みに揺れたり、手拍子をしたり、許される範囲内で可能な限り身体を動かす。現場至上主義者なので、円盤だったらここまでのめり込むことができていなかったと思う。今日のシアタークリエでしか生まれないパフォーマンスの温度感を肌で感じ、その熱をステージに返すつもりで精一杯反応した。普段私が観劇する舞台は表現を一方的に受け取るタイプのものが多いので、これほどまで役者と観客が一体となって作っていくような舞台を観たのは初めてかもしれない。ハロー!プロジェクトのコンサートと同じくらいの熱い体験だった。

 

歌唱面は、全員曲は勿論として、「ギャンブラー」(越岡裕貴)と「少女」(桐島十和子)のデュエットや、「マフィア」(松崎祐介)の全力口パクをサポートした「支配人」(中川翔子)の熱唱が印象的。越岡さん×桐島さんのハーモニーは幻想的なシーンにぴったりで、第2話のクライマックスに相応しい見せ場だった。また、しょこたんによる本気の「パート・オブ・ユア・ワールド」には圧倒された。このパートは日替わりらしいが贅沢な見せ場である。熱唱に合わせてエアパフォーマンスする松崎さんも息ぴったり。第5話以降はアドリブ全開のため役者さんら全員が解き放たれたかのように自由にやっていて楽しかったなあ。1話〜4話までの計算し尽くされた物語はあくまで前菜で、自由奔放なクライマックスこそが『SHOW BOY』のメインディッシュ。

 

ダンスでいえばやはり福田さんと高田さん。「裏方」(福田悠太)は諸事情により一度夢を諦めてしまったけれどまだ諦めきれない元演者。「主演ダンサー」(高田翔)は「裏方」の後輩であり、軽薄さで物語を引っ掻き回す役どころ。第1話はそんな2人のいざこざで進むのだが、随所で演じながら踊るタップダンスが滑らかで美しく、都度都度魅せられた。また、終盤のとある場面で突如舞台に躍り出た「通訳」(瀬下尚人)は演者の本職がタップダンサーであり、「通訳」「裏方」「主演ダンサー」の3人による鮮やかなダンスセッションは圧巻だった。

 

タップダンスだけでなく、ふぉ~ゆ~4人の息の合ったダンスや、序盤と終盤のオールキャストでのパフォーマンスなど、見どころ満載で目が足りない。そういう意味でも一回の乗船では足りないのだ。足りないながらも印象に残ったのは越岡さんの華やかなダンス。派手な女性ダンサー達に混じっても一瞬わからず、ギャグとして成立してないんじゃ??と心配になるくらい、ずっと見ていたくなるような華麗なダンスだった。

 

あと舞台セットの話をすると、マンパワーで左右へと移動する大掛かりなマイクスタンド付きボックス(なんて呼ぶかわからん)は、シンプルなセットばかり見てきた私にとって新鮮だった。主役らの物語が展開される背後で、〈さがせさがせさがせエンジェル♪〉と真顔で歌う4人がボックスに乗って横切るくだりとか画的に面白すぎる。後々「あのボックスに乗っていた人が主役もしくは準主役だったのか!」と気付くことになるが、それを知らなくても愉快痛快。上空から降りてくるお月さまや「SHOW BOY」の電光板もゴージャスだし、大味のセットだらけで気分が上がる。ずっとハイになっていられたのは、大道具、小道具がユニークだったのも一因かもしれない。目が楽しい。

 

 

ただ、派手なだけで脚本がふわっとしていたらそこまで楽しめていない。私が本作に興奮している一番の理由は、本作の構成である。プロローグで「ショー5分前!」の慌ただしさが表現された後、〈と、そ~の~ま~え~にっ〉という決まり文句が挿入されると必ず開演1時間前に巻き戻り、ふぉ~ゆ~4人が演じるメインキャラクター周りで起こった事件が少しずつ紐解かれる。いずれも同じ時系列で話が展開しているため、1話の途中で出てきた主役以外の登場人物の行動が2話で描かれ、更に1話、2話で一瞬登場したアイツが3話で主役になり...という風に、物語が徐々に明かされていく構成なのだ。物語が進むにつれてキャラクターにどんどん深みが出ていき、第5話で4人が楽屋に集合した頃には、全員のことを好きになっている。各々が全く異なる目的を持っているため、とことん嚙み合わないのが面白おかしく、そこに演者の自由なアドリブが乗ってくるから滅茶苦茶だ。

 

同時刻に船内の各所で別の出来事が起こっている。この進行に気付いたとき、とあるゲームを連想した。CAPCOMの隠れた名作『ゴーストトリック』である。

 

ゴーストトリック』は『逆転裁判』シリーズの生みの親・巧舟氏がディレクターを務めるオリジナル作品。ある夜ゴミ捨て場で死んでいた主人公が、ゴーストとして覚醒し、「死者のチカラ」を用いて失われた記憶を取り戻す1日限りの旅に出る…というミステリーアドベンチャーである。半径数メートルの範囲で物体間を飛び移ったり、取り憑いた物体を操ったり、電話線を通って遠方までワープしたり、失敗しても4分前まで時間を巻き戻すことができたりと、一見万能型の主人公だが、あくまで目に見える範囲でしか移動できないため、事件の全体像を掴めないまま記憶の断片を集めていく。すべての点が綺麗に結びつくクライマックスが鮮やかで、未だに根強い支持を得ている作品である。

 

 


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アプリ版は最大2,080円の課金で全ストーリーをプレイ可能。ノリは『SHOW BOY』よりもドライでハードボイルドだが、絶対に損はさせないのでぜひ手に取ってみてほしい

 

 

プレイヤーは基本主人公目線で物語を進めていくが、時々主人公が滞在しているエリアを俯瞰するアングルが挿入され、現在地の情報がプレイヤーに与えられる。その時に、『SHOW BOY』と同様の気付きを得る。「第2話と第7話のキャラクター、繋がっていたのか!!」、といったように。一夜限りの命を与えられたという設定なので、当然同時刻に様々な事件が並走しており、主人公の周りで暗躍する非常に濃いキャラクター達が、死者のチカラを駆使する内に同じ場所に居合わせたときの感動。関係ないと思っていた点と点が結びつく痛快さはまさしく『SHOW BOY』第1話~第4話で味わったものだ。奇しくも、『ゴーストトリック』終盤のとあるエリアは潜水艦であり、海の乗り物内で複数の事件が起こる様子は完全にそれである。「『舞台版 ゴーストトリック』じゃん!?!?」と謎の感動を覚えていたのは、シアタークリエ内で筆者一人だけだろう。(何なら顔面を床に擦り付けて気絶しているキービジュアルは、スライディング土下座したギャンブラーおじさんに見えてきた...)

 

 

当然のことながら『SHOW BOY』に死者のチカラを使える主人公はいないが、まるで死者のチカラに導かれるように交わる「裏方」、「ギャンブラー」、「マフィア」、「見習い」(辰巳雄大)の4人が織りなす四者四様の物語は、短編としていずれも上質だ。

 

特に好きだったのが越岡さんパートである第2話「ペーパームーン」。ギャンブルの果てに無一文となった男と、突如カジノに飛び込んできた見ず知らずの少女が、利害の一致により結びつく。最初はお互い小馬鹿にし合うも、やがて欠陥がある者として共鳴し、音楽で絡み合い、理解し合う。この一連のやり取りが愛おしくて愛おしくて.......。フジ系列の深夜ドラマとかでバディ物としてワンクール描いてほしいくらいツボに入った。

 

 

脚本は勿論だが、役者さんの力があってこそ輝いた短編だと思う。ダーティで気障でしかしどこか憎めないキャラクターを、"こしる"*2でお馴染みの天然記念物・越岡裕貴が演じることで何倍も愛おしさが増していた。また、相手役の桐島さんは越岡さん相手に全く臆せず、思春期特有の憎たらしさと無邪気さをぶつけており爽快だった。お互いいがみ合いながらも惹かれ合うという、たりないふたりが織りなす一夜限りの物語。好きにならないわけがない。

 

他の話も濃いキャラクター達の濃いストーリーばかりで全く飽きない。こういう構成なので、話が面白くなかったら「また時戻るんかい」と不満げなツッコミを入れてしまいかねないが、「見習い」と「主演ダンサー」による「エンジェル」(高嶋菜七)探しのいざこざも、「マフィア」「通訳」「支配人」らの勘違い追いかけっこも、情緒不安定な「見習い」と酔いどれ「エンジェル」の奇妙な付き合いも、手を叩いて笑いながら観賞した。書いてて気づいたが、どの物語も「すれ違い」「勘違い」が軸になっているから面白おかしく楽しめたのだろう。とことん嚙み合わないままクライマックスのショーに突入し、妙に歯車が合ってしまう。キットカットクラブの観客と違って裏側のいざこざを知っている我々は、奇妙な形で成功するショーに愛おしいまなざしを向けてしまうのだ。

 

「奇妙」といえば、極端にキャラクター化された登場人物達に妙に人間臭さを感じてしまうのもポイントだ。そのせいでどいつもこいつも愛してしまう。「ミスターマジック」(辰巳智秋)の元で働くマジシャンの「見習い」は、本番に超絶弱いため試験で失敗し続ける落ちこぼれのマジシャンだが、そのくせ超鈍感のためクビ宣告を受けても気付かない。第4話が始まったときは「ミスターマジック」との話の噛み合わなさに狂気を感じたが、「裏方」へ密かに好意を寄せる姿や*3、恋も仕事もうまくいかなくてしょげてる姿、「エンジェル」の前では意気揚々と成功してみせるところなど、パーソナルな部分を次々開示されたことで次第に応援したい気持ちが芽生えていく。そうやって好感度が高まった末に、大勢の観客の前でマジックを大成功させてみせる。マジックそのものへの感動と、ついに「見習い」が一人前のマジシャンになったことへの感動を、同時に味わうことができる。

 

松崎さん演じる中国人の「マフィア」は今作の中でもっとも濃い人物で、警察のおとり捜査に引っかかり、「通訳」を人質に船内を逃げ回る。この文章だけを読むとシリアスな展開に見えるかもしれないが、一番のコメディー担当だ。警察から逃げ回っていたはずが気付いたら「支配人」に捕まり、歌い手としてステージに立つことになってしまう。彼の中国語と「支配人」のすれ違いっぷりは痛快で、最終的に「ヤルシカナイネ」botになって周りを搔きまわし始めた時は笑い死ぬかと思った。松崎さんの中国語は今作に出演するタイミングで習得したらしいが、そうは思えないほどの流暢さで、元々中国にお住まいなのかと思ったほどだ。作中一番の変人に対しても人間臭さを感じてしまうのは、娘を愛するパパという側面や、本当はパフォーマーに憧れていたという過去、そしてその設定を違和感なく落とし込んだ松崎さんの演技力(と本人の人柄)といった要素が掛け算されたからだろう。そんな彼らの人間臭さと、一方で洗練されたパフォーマンスにとことん惹きつけられたのである。

 

 


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豪華絢爛なショーパフォーマンスと緻密に計算された物語、そして人間臭いキャラクター達の群像劇がぎゅうぎゅうに詰まった極上のエンターテイメント、『SHOW BOY』。へんてこなきっかけで観劇することになったが、お釣りがくるほどの価値ある観劇体験だった。この舞台が謎にジャニーズ現場デビューになってしまったが*4、「SHOWBOY新規」の私は幸せ者だと心から思う。いつかふぉ~ゆ~の現場に行けたらいいな!あと朝顔が無事咲きますように!

 

 

 


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ついでに渦中(?)の平井美葉さんも見てね

 

 

 

*1:ふぉ~ゆ~に関しても先日皆で同時鑑賞した『いざッ、Now』コンにバックダンサーとして出てることしか知りませんでした。逆にその情報だけ仕入れてる自分何...

*2:観劇当時は勿論知らず、後から「ふぉ〜ゆ〜情報サービス」や「ふぉ〜ゆ〜の人生はゲームじゃないか!」を観て概念を知った

*3:ただ気になったのは「見習い」のゲイ描写。「見習い」自身には何の問題もないが、「支配人」の反応がともすれば周りにアウティングをしかねないようなものでヒヤヒヤした。「アレ」という言葉選びもだが、脚本家が自覚して表現しているかどうか微妙なラインだったので、再演するのであれば慎重に描いてほしい...。「マフィア」の女装のくだりもちょっともやもや。

*4:厳密に言えば昨年末の映画『滝沢歌舞伎 ZERO 2020 The Movie』が初めてジャニーズの作品に触れた日だが、マジの現場に行くのは今回が初