零れ落ちる前に。

その時々感じたことを、零れ落ちる前に。

夏とドラマと積ん読と。

ささやかな夏休みがはじまった。23年目にして、もっとも短く、静かなおやすみ。地元にも戻らず、お出かけもほどほどに、寂しくも健やかにして過ごそうと思う。慌ただしい納期前も抜けたし、仕事のことも忘れてゆっくりしたいところだったからちょうど良かった。

 

実家に帰るか帰らまいかは直前まで迷っていた。しかし、時々夜遅くに酔っ払いの両親からかかってくる凸電で、「微妙な空気だし、任せるよ」と言われて、帰らないことを決めた。地元は田舎と都会が中途半端に混じった所で、帰った瞬間村八分!夜逃げ!一生地獄コースで頑張るよ♡って事態に陥ることは決してないのだが、地域コミュニティの根強さ、一瞬で伝わる連絡網の速さは健在だ。親に迷惑をかけたくないし、自分自身もどーでもいいご近所さんから白い目で見られたくはない。何よりお盆恒例、お婆ちゃんとの墓参りを実行した結果、数ヶ月後にお婆ちゃんを看取ることになる、なんてオチは避けたいのだ。まだまだ長生きしていてほしい。独り身の寂しさから認知症を装ってデイサービスセンターに入り、一日にして「こんなボケ老人達と一緒にされたくない」と憤って帰ってきた図太くて逞しい祖母には、まだまだ恥を晒しながら生きていてほしいのだ。母親と職員さんの前で「は〜〜〜わたしゃだれだっけかのぅ」と大ボケかました昭和生まれの大女優には、もっともっとバカやっててくれって思い。とはいえ寂しいだろうし電話してあげようかなあ。

 

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【ライブレポート】2020.7.12 Hello! Project 2020 Summer COVERS 〜The Ballad〜 中野公演 Cチーム

夏のハロコンが始まりました。題してHello! Project 2020 Summer COVERS 〜The Ballad〜」。総勢52名のハロメンが3チームに分かれ、1人ずつバラード曲ソロ歌唱の形を取り、ハロプロの曲を一切歌わないという、史上初の特殊なコンサートです。

 

声出し禁止、着席鑑賞、盛り上がり曲封印、ダンス禁止...という徹底っぷり。それなら普通のハロコンができるようになるまでやらなくても良いのでは?という声もあるのもわかりますし、少し曇っていた自分も心の準備ができないまま会場入りし、開演を迎えるまでは不安な気持ちでいっぱいでした。しかし、結果は大満足。「ソロでバラードを歌う」企画は、個々の歌声の持ち味を平時以上に際立たせてることに成功しており、「みんなこんなに歌がうまかったんだ!」と、改めてハロメンひとりひとりの実力を知ることができました。新人の子もベテランの先輩も、それぞれに眩い魅力があって、やはり粒ぞろいなプロジェクト、恐るべし...と心震わせながら、静かにペンライトを振り、拍手を送りました。

 

感染者数は増加傾向で不安な日々が続きますが、最大限の予防対策を用意し、少しでも早く彼女たちの歌をファンのみなさんに届けよう!と動いてくださった事務所様には感謝しかありません。7月16日(木)付のNews zeroで好意的に報道してくださっていましたが、集合時間を席ごとに3分割したり、検温→消毒液→追跡システム→チケット確認(もぎりなし)というルートを確立してスムーズな入場を実現したり、ステージ裏ではMCを含むマイクを53人分用意していたり、とにかく徹底されていました。これで誰かが罹患していたらどうしようもないくらい、徹底された環境の上で開催されたのだということを、知らない方にも伝わってほしいと切に願います。

 


 

※以下、本公演の歌唱曲に関するネタバレがあります。

 

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僕もまた、永遠の繭期に閉じ込められる。 #はじめての繭期2020 で理解したこの世界の終わりなき魅力について

僕が繭期を知ったのは『LILIUM-リリウム 少女純潔歌劇-』という作品が最初だった。「ハロプロは演技もできる」。彼女らのストイックなチャレンジ精神に感銘を受ける日々だが、歌唱もダンスも表現力もハイレベルなのに、演技力という武器まで持ってしまったらどうなってしまうのか、という戦々恐々の思いで初舞台を観た。

 

死んだ。

 

な、なんやねんこの重たい舞台...。噂には聞いていたけどとんでもねえ...。

 

これはマジな話ですが、1週間鬱々たる思いを引きずるくらいの衝撃を受けた作品だった。「ハロメン演技もできるんだ!スゲ~!」という無邪気な感想を呟く予定だったが、作品の世界観にこれ以上浸かりすぎると、精神に異常をきたしてしまうんじゃないかと思うくらい、得体のしれないエネルギーを持った物語だった。

 

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オタ活の夜明け~浜浦彩乃出演『あいまいばかりの世界』鑑賞記。

最後に現場に行った2020年2月26日(水)からまるっと4ヶ月。6月末のある日をもって、オタク活動の自粛を解禁しました。

 

向かった場所は、演劇女子部ではおなじみのこくみん共済coopホール/スペースゼロです。おなじみと言いつつ足を運ぶのは初めて。そもそもハロプロに限らず舞台慣れしておらず、作法もわからないまま、色々迷いながらの現場復帰です。

 

そして鑑賞した作品は...自粛前最後に行った現場と同じくこぶし絡み。元こぶしファクトリー浜浦彩乃ちゃんの解散後初舞台、『あいまいばかりの世界』です。他の出演者のことは全く知らず、作品についても知識ゼロ。予備知識もかなり少ない状態でしたが、じんわりと心に響く素敵な舞台体験を味わうことができました。

 

ということで、自粛期間を経て最初に行ったオタク活動の記録をここに記します。

 

 

http://flying-trip.com/img/works/aimai/aimai-002.jpg

 

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感想『GARO -VERSUS ROAD-』 新生牙狼への違和感と、斬新な結末から抱いた今後への期待

2005年に始まった『牙狼』シリーズも今年で15年目。15周年記念作として制作された『GARO -VERSUS ROAD-』は、題字に「牙狼」という字が当てられていないところからわかるように、これまでとは一線を画する世界観を見せてくれました。

 

その大きな違いとは、「最後まで牙狼が登場しない」こと。黄金騎士・牙狼を中心に様々な魔戒騎士が登場し、人々を魔獣・ホラーから守るという鉄板パターンが『牙狼』シリーズでは脈々と受け継がれてきました。冴島鋼牙シリーズ、道外流牙シリーズ、冴島雷牙シリーズのどの作品でも、テイストが変わろうとも必ず踏襲されてきた王道を、15年目にしてついに踏み外したのです。

 

末席の牙狼ファンとして、この路線には期待半分、不安半分でした。掟破りの特撮作品はこれまでも沢山視聴してきたのでテーマそのものに対する抵抗感は少なめ。しかし、この破壊的行為をよりにもよって『牙狼』シリーズでやるということ。実行するのが15年目であるという事実。不安がないわけがありません。

 

そんなモヤモヤを抱きながら視聴した結果はというと、正直、最初と同じ割合の感想。高評価と低評価が半々。複雑な思いを抱きながらも、辿り着いた結末は面白かったし、『牙狼』シリーズの中で挑戦することには、確かに意義を感じる作品でした。

 

苦々しい感想にはなりますが、この自粛期間中、大いに楽しませてもらったのは嘘ではないですし、肯定も否定もすべてまるっとここに記したいと思います。

 

 

 

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『SPEC』に出逢った2010年、支えられた2020年。

 『SPEC』の地上波電撃再放送が始まってから3週間。本日の「癸の回」を以て、物語は怒涛のクライマックスを迎える。連ドラの3ヶ月とは違って短い期間ではあったが、ハイスピードで物語が展開する本作と短期間は相性が良く、疲弊した体と心が高まる!健康的で刺激的な連夜を過ごすことができた。

 

2010年の放送当時、Twitterはまだまだ黎明期。リアルタイムで実況している人は少なく、いたとしても大島優一のような日陰者ばかりだったと思う。10年経った今、毎晩 #SPEC で盛り上がる『SPEC』実況。餃子の具のようにネタが詰まりまくったこのドラマと、Twitterの相性は抜群で、私も大いに盛り上がった。関東地区でしか再放送されていないので、毎日トレンド入り!という訳には行かなかったが、静かに一人で楽しんでいたあの頃を思うと充分だ。

 

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「自宅ライブツアー」をいつでも、どこでも。「Base Ball Bear LIVE IN LIVE~IN YOUR HOME~」ライブレポート

新型コロナウイルスの影響によるライブ自粛が始まってから、間もなく4ヶ月の月日が経過する。この間に発生した経済的損失はもちろん甚大であり、この間に出会うはずだった熱いライブの数々を思うと悔やんでも悔やみ切れない。

 

そんな中、唯一幸運だったのは、2020年がSNS全盛の時代だったということ。

 

Instagramでは星野源主導による「うちで踊ろう」が一大ムーブメントになり、サカナクション山口一郎によるほぼ毎夜の配信企画が2か月以上にわたって行われている。アーティストだけでなく、俳優、アイドル、芸人などなど、インスタライブはコロナ禍以前よりも絶えず配信され続けている印象を受ける。

 

Twitterではハッシュタグをつけた様々なバトンがアーティスト間で繋がった。拡散文化が特徴的なSNSだからこそ、その輪は日に日に広がっていき、貴重なアーティスト間同士の繋がりをいくつも目にした。

 

また、YouTubeでは打首獄門同好会aikoNUMBER GIRLらが無観客ライブを行ったり、様々なアーティストが過去作品の無料配信を始めるなど、膨大な数のコンテンツが世に解き放たれた。スピッツやB'z、Mr.Childrenといった大物アーティストが過去作を公開した時はかなり驚いた。「無料で全編視聴可能」というとんだプレミア企画は、今後のことを考えると少し危険だが、ライブが無いことにより空いた心の穴を埋めるには有難かった。

 

その他にも、DJイベントやジャズストリート、ロックフェスなど、本来行われる予定だったものが「Stay Home ver.」という特別仕様で催されている様子も観測できた。限られた時間、一つしかないからだですべてのコンテンツを追い切ることは不可能だ。だが、外に出られないという状況下で、それだけ膨大な選択肢を取ることができたということ自体が幸福なことだと思う。生活がかかっている方が音楽業界に数多くいる中で不躾な発言かもしれないが、このSNSが発達した時代と、SNSという手段を大いに駆使して発信してくださっている関係者各位には頭が上がらない。

 

 

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