零れ落ちる前に。

その時々感じたことを、零れ落ちる前に。

震災準当事者日記①

正月、地元石川で大災害が起こった。私は西の方へと旅行中で、ホテルへのチェックインが済んだところだった。たまたま例年通りの帰省はしなかった。Twitterに流れてきた初報で「最近地元の地震多いな...」と不安に思った矢先、小さいながらもじんわりとした横揺れを感じた。テレビを点けたら地元が映っていた。明らかにいつもと違う物々しい雰囲気で、東日本大震災の記憶が蘇った。「津波が来ます!逃げてください!」と絶叫するアナウンサーの声に身体が硬直した。現実味がなく、すぐに気持ちを切り替えることはできなかった。私が滞在していた地域にも津波注意報が出たので避難の準備をしたが、逃げるほどの場所ではないだろうと判断し、結局その場に留まった。結果的に無事で済んだが、非常時の判断として褒められるものではなかったかもしれない。

 

すぐさま母に連絡をとった。電話は繋がらず、返信もない。直前のLINEが正月登山の写真だったので気が気でなかった。10分後、無事だと連絡がありホッとした。後から聞いた話だが、登山していたのは午前中で、本震の時は自宅にいたそうだ。運が良かった。父は祖母の入院先の病院にいたため、他に人がいる場所での被災だった。本震の後、大慌てで車を走らせ、帰宅途中の信号待ちでまた横揺れに遭ったという。人生で一度も経験したことのない大地震に父は興奮していた。引きこもりがちの弟はアナウンサーの絶叫に恐怖し、一目散に高台へと逃げた。実家は海から距離があるため、親は笑い話として語っていたが、逃げることに躊躇のない姿勢は立派だと思った。母の一報以外は全て後から聞いた話で、実際に立ち会っていたらもっと生々しく大変な経験だっただろう。本当に皆無事で良かった。

 

友人の安否を確認し、しばしニュースを眺めていた。画面から目を離すことができなかった。何が起こっているのか全体像が飲み込めない時間が続いた。ひとまず津波による被害はそこまで大きくないことはわかった。東日本大震災ほどではない。大丈夫だ。そう念じるも、やがて夜になると火の海になった輪島市の映像が流れてきて、思わずテレビを消した。本当に大変な災害が起きたのだとようやく腹落ちした。

 

旅行から帰ってきてから心ここに在らずだった。とにかくSNSやテレビから得た情報を掻き集めた。募金をした。リア垢のストーリーズで情報を共有した。4日から予定していた帰省を取りやめるか迷った。金沢はまだ被害が少なそうだから会いに行ってもいいのではないか。悶々とした気持ちでいたら、3日の昼に母から連絡があった。「無理して来ん方がいいよ」。母は一向に収まらない余震に疲弊していた。「チケット取っとる?」「取っとるけど無料で払い戻しできるよ」「ならそうした方がいい」「わかった」「また春にくればいいよ」。母から金沢の状況を聞き、帰省をやめることにした。

 

しかしその1時間後、今度は父から連絡があり、「全然大丈夫やし来なさい」の一点張り。完全に真逆のことを言う。その場は「チケットもう払い戻したし、やっぱり心配やから帰省はやめる!」と押し切ったが、父の息子に会いたい気持ちも尤もだなと思い、再び迷った。決め手となったのは、友人がグループLINEに共有した「当たり屋グループ」のデマ情報*1である。どうやら職場で回ってきたらしく、被害に遭う人を減らせるよう拡散してくれと連絡があった。その友人はかつて私が上京した時に遭ったマルチ商法を見抜いてくれた人で、詐欺に敏感な人でも、この非常時では騙されてしまうのだと驚いた。SNS上には他にも「県外ナンバーのハイエースは火事場泥棒である」という注意喚起型のデマが拡散されており、これは外国人差別を煽る言説も混ざった悪質なものだった。さすがに友人間で回ってくることはなかったが、紙一重だと思った。親も不安が膨張し、デマに晒されていないか心配になった。少しでも不安な気持ちを満たせたら...と思い、当初予定してた帰省予定日から1日ずらし、5日の昼から6日の昼にかけて弾丸帰省をすることに決めた。

 

f:id:exloyks:20240106150136j:image

 

5日の昼、親戚に挨拶するため加賀温泉駅で母と待ち合わせた。北陸新幹線の開通が春に迫っており、駅全体が工事中のため一見わかりにくいが、アビオシティ加賀から加賀市美術館を跨ぐ渡り廊下が地震の影響で崩れ落ちていた*2。やがて親の車が現着し、親戚の家へと向かった。会う人会う人、語らずにはいられないという印象だった。各々が体験した経験・恐怖を互いに共有し合っていた。齢90を目前とした祖母さえも「こんな大きな揺れは経験したことない」という。今なお被災している能登とは空気が違い、ひと段落着いた風ではあったが、正月の衝撃と連日の余震で未だ気を張っている様子だった。道中、母はしきりに「500人は死んどるな」と言った。この時点では死者100人未満だったが、8日14時の公表時点で安否不明者が急増したことを思うと、ありえない数ではない。どうか1人でも多くの命が救われてほしい。政府も、国民も、今なお続いているこの災害を軽く見ないでほしい。

 

遅めの正月挨拶を済ませ、金沢の実家へと帰った。職務上正月から四方八方に駆り出されていた父は、金曜になってようやくひと段落着いたようだった。息子と飲み交わすのを心待ちにしていたようで、母のおせち料理を囲い、家族全員で正月をやり直した。父は顔を赤らめながら「やっと正月や」と嬉しそうだった。陽気さ由来の無神経な発言が苦手で、父のことは正直あまり好きではないが、今日はたくさん話を聞こうと思った。自らのFacebookに投稿した被災当時の動画をしつこく見せてきたり、NHKスペシャルの悲惨な震災報道を見ながら興奮状態になったりと、この人のこういうとこがなあ...と思うことは山ほどあったけど、あまり嫌な気持ちにはならなかった。父も父なりに、被災経験を咀嚼している。鮮度の高い彼の感情を、「たまたま例年通りの帰省をしなかった息子」という準当事者の立場で受け止めてあげたいと思った。

 

***

 

遠くで大災害や戦争、大虐殺が起きていても、私はいつも、自分ごととして捉えるのにどうしても時間がかかってしまう。直視することから逃げてしまう。でも今回の災害は、「被災地」になってしまった地元のことは、リアルタイムで真正面から見つめなければいけないと思った。金沢や加賀ならともかく、能登には親類もいないし馴染みもそこまでない。行ったことがあるとしても一度や二度くらいだ。それでも強く感情移入し、石川の人々の痛みを自分ごととして捉えている。地元の閉塞感が嫌で上京を選択したが、私のアイデンティティは結局石川県にあるんだなと実感している。今起きていることを直視することが石川で生を受けた私の責務だと思う。

 

 

 

【情報全般】

令和6年能登半島地震における情報リンク集 – AI防災協議会

令和6年(2024年)能登半島地震に関する情報 | 石川県

目的別・令和6年(2024年)能登半島地震に関する情報(対策本部・被災状況) | 石川県

石川県公式Xアカウント

NHKニュース 速報・最新情報

令和6年能登半島地震 石川県で震度7 関連ニュース | NHKニュース

能登半島地震:北陸中日新聞Web

中日新聞電子版:中日新聞Web(3日より災害時紙面が無料公開中) 

北國新聞

 

 

【寄付先】

令和6年能登半島地震災害義援金|国内災害義援金・海外救援金へのご寄付|寄付する|日本赤十字社

令和6年能登半島地震 緊急支援募金(Yahoo!基金) - Yahoo!ネット募金

令和6年能登半島地震 災害支援基金(公益財団法人ほくりくみらい基金 

令和6年能登半島地震の復興支援・寄付をする|ふるさとチョイス災害支援

 

災害用伝言板

171・web171提供速報 | 災害対策 | 企業情報 | NTT東日本

災害時TOP画面 | 災害用伝言板(web171)

 

【被災状況】

令和6年能登半島地震被災状況マップ

能登半島地震フォトグラメトリ・マップ

トヨタ | 通れた道マップ

 

【避難所関連】

物品支援をご検討の方に知っていただきたいこと(石川県珠洲市の現場から)|今村久美(認定NPOカタリバ/公益社団法人ハタチ基金)

【避難所生活をされている方へ】|佐藤 一男

すれ違いを起こさないために――東日本大震災から学ぶ支援の届け方/佐藤一男 / 防災士 - SYNODOS

災害時 避難所における性被害 東日本大震災における被災地の声 - 性暴力を考える - NHK みんなでプラス

ざこ寝、プライバシーなし……「避難所の劣悪な環境」なぜ変わらないのか - Yahoo!ニュース

【避難所内に聞こえない人がいるときのお願い】 - YouTube

【能登半島地震】発生1週間、支援物資はなぜ遅れたか 足りぬ避難所、行政対応追いつかず:北陸中日新聞Web

 

【デマ関連】

地震や事故後、SNSで相次ぐデマ 表示数稼ぎも「拡散前に疑って」 [能登半島地震] [石川県]:朝日新聞デジタル

能登の被災地で「マイクロバスに乗った中国人窃盗団」というデマが拡散中。情報源の消防団長は「誤情報だった」と認める。 - Togetter

ほんとに災害時のデマは勘弁してほしい:ロマン優光連載273 | 実話BUNKAオンライン

災害時に生まれる「外国人犯罪」の流言。“気遣い”に潜む危うさとは【東日本大震災】 | ハフポスト NEWS

 

【LGBTQ+当事者向け情報】

能登半島地震でお困りの方へ【リンクなど随時更新中】 | 九州・福岡でLGBTQ・性同一性障害を知る・学ぶ|GID LINK

【災害時】トランスジェンダー・ノンバイナリーにとって重要なこと|池袋真(Ikebukuro Singh)

トランスジェンダーが緊急時に月経ナプキンを必要とする6つのケース - 敏感肌ADHDが生活を試みる

 

【被災者の語り】

【能登半島地震】がれきの下の父、握る手次第に冷たく 輪島救助追いつかず 本紙記者ルポ|石川のニュース|北國新聞

【能登半島地震】まるで空襲、焼け野原 輪島・朝市通り炎上 本紙記者ルポ 泣きながら救助待つ市民|社会|石川のニュース|北國新聞

地震 石川 珠洲 住民たちが協力し孤立状態解消した地区も | NHK | 令和6年能登半島地震

地震で被災の外国人 避難所入れず食料など確保できない人も | NHK | 令和6年能登半島地震

2024.01.01 令和6年能登半島地震体験記|みつごご

古民家全壊しました…【令和6年能登半島地震】|野水克也(nominomi)

新年早々、住んでいる地域で地震が起こった|Masumi

〈1.1大震災〉晴れの日、無情の雪 寺本さん家族7人死亡|社会|石川のニュース|北國新聞

〈1.1大震災〉救命まだ諦めない 救出の93歳回復、何度もうなずく|社会|石川のニュース|北國新聞

 

【その他】

阪神大震災のとき精神科医は何を考え、どのように行動したか