零れ落ちる前に。

その時々感じたことを、零れ落ちる前に。

「自宅ライブツアー」をいつでも、どこでも。「Base Ball Bear LIVE IN LIVE~IN YOUR HOME~」ライブレポート

新型コロナウイルスの影響によるライブ自粛が始まってから、間もなく4ヶ月の月日が経過する。この間に発生した経済的損失はもちろん甚大であり、この間に出会うはずだった熱いライブの数々を思うと悔やんでも悔やみ切れない。

 

そんな中、唯一幸運だったのは、2020年がSNS全盛の時代だったということ。

 

Instagramでは星野源主導による「うちで踊ろう」が一大ムーブメントになり、サカナクション山口一郎によるほぼ毎夜の配信企画が2か月以上にわたって行われている。アーティストだけでなく、俳優、アイドル、芸人などなど、インスタライブはコロナ禍以前よりも絶えず配信され続けている印象を受ける。

 

Twitterではハッシュタグをつけた様々なバトンがアーティスト間で繋がった。拡散文化が特徴的なSNSだからこそ、その輪は日に日に広がっていき、貴重なアーティスト間同士の繋がりをいくつも目にした。

 

また、YouTubeでは打首獄門同好会aikoNUMBER GIRLらが無観客ライブを行ったり、様々なアーティストが過去作品の無料配信を始めるなど、膨大な数のコンテンツが世に解き放たれた。スピッツやB'z、Mr.Childrenといった大物アーティストが過去作を公開した時はかなり驚いた。「無料で全編視聴可能」というとんだプレミア企画は、今後のことを考えると少し危険だが、ライブが無いことにより空いた心の穴を埋めるには有難かった。

 

その他にも、DJイベントやジャズストリート、ロックフェスなど、本来行われる予定だったものが「Stay Home ver.」という特別仕様で催されている様子も観測できた。限られた時間、一つしかないからだですべてのコンテンツを追い切ることは不可能だ。だが、外に出られないという状況下で、それだけ膨大な選択肢を取ることができたということ自体が幸福なことだと思う。生活がかかっている方が音楽業界に数多くいる中で不躾な発言かもしれないが、このSNSが発達した時代と、SNSという手段を大いに駆使して発信してくださっている関係者各位には頭が上がらない。

 

 

 

 

さて、数多のアーティストが様々な配信企画を行う中で、我が推しバンド・Base Ball Bearはどう動くのだろうか。ハロプロを中心とした趣味生活の中で、時折そんな思いが頭をよぎった。小出祐介のことだから、安易に配信企画はやるまい。何か策を練っているか、はたまた配信企画は諦めて次のライブに向けて英気を養っているのか......。などと思いにふけっていると、このような一報が流れた。

 

 

 

 

ライブツアーの代替として、「自宅ライブツアー」が発表されたのである。タイトルは「LIVE IN LIVE~IN YOUR HOME~」。「あなたのおうちで」という副題がついた特殊なライブツアーだ。

 

「LIVE IN LIVE」は2015年から始まったツアーシリーズ。「vol.1 〜HELLO,NOSTALGIA 編〜」はインディーズ時代のレア曲を中心としたファン狂喜のセトリが組まれたり、「vol.2 ~ C to C2 ~」では過去作『C』と当時の最新作『C2』を曲順に全曲披露する狂気的な企画を実現したりと、とにかくコンセプチュアルな点が特徴である。

 

リードギター湯浅将平が脱退した後、フルカワユタカや弓木英梨乃のサポート期間を経て3ピースバンドとして本格始動した2018年に、シリーズ初のツアー形式「Tour『LIVE IN LIVE』」が開催される。同年秋に「対バン編」となる「 Tour『LIVE IN LIVE~I HUB YOU~』」、その翌年には「LIVE IN LIVE~17才から17年やってますツアー~」が続け様に行われていることからわかるように、ニッチな企画から始まったシリーズは、いつしかバンドの中心企画として定着していった。

 

 

exloyks.hatenablog.com

 

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そして今年も「Tour『LIVE IN LIVE~I HUB YOU 2~』」という題で対バン編が開催される予定だったのだが.......残念ながら、2月末に出されたライブ自粛要請により、秋に延期となってしまった。この後に続く予定だった「TOUR 『LIVE BY THE C3』」は全編中止。この調子だと、延期した対バン編も中止になる可能性が高い。2016年以降、通年でほぼ休まずライブツアーを行うほどライブが中心のバンドだからこそ、自粛によってできた穴は大きいのである。

 

そんな中でツアーの代替案として開催中の「LIVE IN LIVE~IN YOUR HOME~」。小出曰く、「作品」、「ライブ現場」とは異なる「3つ目の可能性」として本企画が上がったという。

 

小出祐介コメント】
新型コロナウィルスの影響で3月からの対バンツアーが延期に、5月からのワンマンツアーは中止となってしまいました。バンドとしては3月末以降、現在に至るまで外出自粛期間が続いています。


「この時間を新曲制作に……」という考えもよぎりはしましたが、ニューアルバムを持ってツアーをやる気持ちでずーっといたので、どうにもギアを変えることができず。あと、自分の頭上で様々なバトンが飛びかってはいるものの、なぜか自分には回っては来ず(来てもたぶんやってない)、パフォーマンスがしたいエモーションを募らせていました。そんなふうに外出自粛期間を過ごすうちに、「ライブ現場以外でのライブ表現」について考え始めました。


僕らはライブ現場への思いもこだわりも強いです。同じ場所で、同じ時間を共有すること。それに勝るものはないと信じています。ただ、「ライブ現場以外でのライブ表現」の可能性を考えておくことは、表現のその幅という意味で、コロナ収束後の自分たちに持ち越せる、唯一ともいえるポジな要素なのではないかと思ったんです。


バンドの表現には、作品とライブ現場の2つだけだと頑なだった自分たちに、「配信には配信のやり方があるかも」と3つ目の可能性が見えてきたわけですから、試してみなくちゃもったいない!


と、いうことで今回企画したのが、仮想ライブ映像の配信です。僕らがみなさんのお宅をめぐるツアーという設定で、全8曲のセットリストとして構築しました。タイトルは「LIVE IN LIVE~IN YOUR HOME~」。しっかりライブグッズも作ってみました。これは、僕らなりの新しいライブの形の提案です。


現在、緊急事態宣言が解除された地域はありますが、完全なコロナ収束に向けてまだまだ意識を緩めることはできない状況です。この企画がみなさんのおうち時間充実の一助になってくれたらと思っています。共に乗り越えていきましょう。そして、またライブ現場で会いましょう!

NEWS | Base Ball Bear Official Website

 

 

小出のコメントを読めばわかるように、配信企画といっても、他とは一線を画した「ライブツアー」としてのこだわりが見て取れる。

 

 

一つは全8曲のセットリストとして構築した点。ライブと同様に楽曲の流れを想定し、可能な限りライブに近い形を表現するための手法である。

 

リモートで生バンドを実現するのは、それぞれの通信環境の差を鑑みると、タイムラグ等の障害に阻まれ不可能だ。そのため、エンジニアによる編集は行われた状態で配信されるため、やはりライブ現場で生まれるグルーブ感やそれに感化され発生する熱気とは程遠い。それと個人的には楽曲同士の繋ぎがライブの肝だと思っているので、ここが必然的に失われるのは痛い。

 

しかし、現在配信中の動画を見ると、その不安は杞憂だった。個々で演奏するからといって原曲をそのままなぞるようなことはなく、通常のツアー同様緻密なリアレンジが施されていた。3人時代のベボベは4人時代以上に「毎回異なるアレンジが楽しめる点」が特徴だと思っているが、今回の各曲のアレンジもこれまでのツアーに勝るとも劣らない。新アレンジでも強固なグルーブ感は健在どころか増しており、エンジニアの編集を通したといっても全く「生感」が損なわれていなかった理由はここにあると思う。

 

また、「毎週0時に公開」というのも肝である。1週前から「次はどの曲が来るのか?」とワクワクしながら待ち、曲名を見て「そう来たか!」と確かな驚きと高揚が沸き上がったのだが、これはライブ現場における「楽曲同士の繋ぎ」から得られる高揚と近かった。

 

このように、見事に「3つ目の可能性」=「ライブ現場以外でのライブ表現」が実現されているのだ。小出はMCで「めっちゃカロリー高い」と愚痴っていたが(曲間にちゃんとMCの配信を入れてくるのもライブっぽい)、熟考の末生まれたこのコンテンツは、実際のライブに限りなく近く、かつ確かな新しさを持っていると自信をもって世間に周知したい。

 

 

 

二つは、ラジオでの先行公開によって生まれる「閉鎖的なリアルタイム性」。ライブの肝である「生感」は、閉鎖的空間でリアルタイムに味わえるからこそ意味を持つ。昨今はライブビューイングやテレビ同時配信、SNSでの同時配信など、現場に行けなくても楽しめるどんどん拡大しているわけだが、やはり画面越しと現場では「生感」が全く違う。

 

しかし、ラジオだとどうか。J-WAVEの番組「SONAR MUSIC」にて、毎週水曜に配信されている訳だが、この配信の存在を熟知して毎週追うことは、YouTubeの0時公開を追うより難易度が高い。ラジオはSNSやテレビと比較するとオールドメディアであり、この事実が疑似的な閉鎖性・リアルタイム性を生む。

 

正直、ラジオでの先行配信を私は結構聞き逃している(おい)。毎週フルで聴けている者、それもタイムフリーではなくリアルタイムで追えている者こそ、最も今ツアーを楽しめていると言えるのではないかと思う。

 

www.j-wave.co.jp

 「SONAR MUSIC」は「#音楽を止めるな!」をキーワードにあらゆるアーティストが自宅ライブを配信するなど、今再注目したい音楽番組となっている

 

 

三つ目は、本ツアーに向けてわざわざツアーグッズを販売している点。これもオリジナリティ全開だ。「だってツアーなんだから、グッズも必要でしょ?」とこいちゃんに真顔で見つめられた、「はい、買います!!!」と即振り込んだ私は従順なオタクです、はい。5月中限定で受注販売されたツアーグッズはこちら。

 

 

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気になったのはマグカップ。「自宅ライブツアー」だからこそ販売できた代物だ。ツアーロゴが施されたシンプルなデザインに惹かれ、タオルとセットで購入した。ややケチなので、Tシャツよりもタオルを毎回購入している私は、例に漏れず新デザインタオルをゲットしご満悦。6月下旬出荷ということでツアー終了までに間に合うか微妙だが......頼む!!間に合ってくれ!!!自宅でマグカップ片手にタオルをぶん回させてくれ!!!

 

 

 

以上のような形で、現在進行形で行われている「LIVE IN LIVE~IN YOUR HOME~」。ライブという形を大切にする彼らだからこそ、実現することができた「自宅ライブツアー」を、おうちでじっくりと楽しみたい。ツアーはまだ途中だが、ここからは現在まで公開された楽曲を軽く「ライブレポート」する。なぜ全曲公開を待たずに書いているのか、それは......6/20(土)で1曲目の限定公開が終わるから.......!!!

 

全曲まとめて聴けないのは勿体無いので、期間延長してくれませんか(土下座)

 

 

 

 

 

M1.「いまは僕の目を見て」

  

1曲目は2nd EP『Grape』が初出、『C3』にも収録されている「いまは僕の目を見て」。爽やかで瑞々しいギターイントロ、どっしりと構えるベース、パキッとしたドラムが混じりあい、涼やかな音色とリズムを生んでいる。秋曲ではあるが、じめじめと暑苦しい今聴くからこそ爽快感が堪らない。

 

この音源は5/6(水)にJ-WAVEにて1日中放送された「#音楽を止めるな ~STAY HOME FESTIVAL~」((

www.j-wave.co.jp

でも配信された。この時は自宅ツアー構想を考えているとは全く知らなかったが、初期段階から練りに練っていたんだなと思うと胸が熱くなる。

 

また、ただ映像を三分割にするだけじゃない映像的な拘りが随所に見られる。大サビ前のGrape色の照明からは、日比谷野音の夜長に演奏されている情景が目に浮かんだ。それにちょくちょく1人に付き3カメ状態になるのが面白い。推し視点、二眼の限界を超え三眼開放!!である。

 

それとメンバーそれぞれの自宅風景が少し覗けてしまい、ドキッとしますね。堀くんの雑多な机周りとか、関根さんのヨガしてんのか??っていう演奏スペースとか。

 

 

いまは僕の目を見て(C3 mix)

いまは僕の目を見て(C3 mix)

  • provided courtesy of iTunes

 

 

 

M2.「すべては君のせいで」

 

続く2曲目は『光源』より「すべては君のせいで」。「short hair」「PERFECT BLUE」に続く本田翼MVシリーズ3作目なので、YouTubeのおすすめで観たことがある方もいるのではないだろうか。ベボベにしては珍しいストリングスが多様されている美しい楽曲だが、楽器3つだけで演奏するライブ版リアレンジ。キーも半音下げしているので大胆な編曲だ。

 

個人的なお気に入りは2番の入り。ハイトーンの切なげなダウンピッキングハイハットの刻みが絡んで、前後との緩急がつく。この時の「次来るぞ、来るぞ......」と心音が早まる感じは、よくライブ会場で味わう感覚と同じだ。通常のCD音源ではなかなか味わえない。

 

靄がかかる映像演出や、煌びやかな緑の光もシンプルながらうっとりする。熱は決して高くないが、終始平熱のまま心を動かしてくるこの曲は、やはりライブだからこそ映えるのだ。ライブといっても「自宅ライブツアー」なので、許される限り毎晩聴きたい。

 

 

すべては君のせいで

すべては君のせいで

  • provided courtesy of iTunes

 

 

M3.「転校生」

  

近年、ツアーごとに目玉となる楽曲がある。滅多に演奏されないレア曲がぶち込まれると、長年追っているファンとしては一瞬で血が滾る。今ツアーにおける目玉曲は『新呼吸』から「転校生」。昔から大大大大大好きな曲なのでひっくり返った。カッティングの神様再来!

 

3人時代どころか4人時代の頃も生で聴いたことのなかった楽曲は、本来ならば生で聴けたのかな......と思うと悔しいが、期間限定とはいえ、こうしてひとつの映像として残されたことがたまらなく嬉しい。ライブ音源を聴いた際はテンポが爆速になっていたので、原曲と同じBPMのライブバージョンはかえって新鮮である。

 

注目すべきリアレンジポイントは、後半のギターソロ。原曲の湯浅ソロに近いメロディーから始まり、小出流のアレンジで新たな展開を見せる。そこにバチッとキマるドラム・ベースの合いの手がさらにソロを盛り上げ、一気にクライマックスへ!ここで歌に戻るかと思いきや、追加の8小節分でゆったりと歌へと繋ぐ......といったように、起承転結がハッキリとした新アレンジで魅せてくれた。家に居ながらも日比谷野音で聴いているような錯覚を覚える情緒的なソロパートだ。

 

転校生

転校生

  • provided courtesy of iTunes

原点と聴き比べするのも楽しい。 しかし9年前って早え......

 

 

原曲の持つ妖しげな雰囲気が、より大人っぽさを増してエロティックに奏でられる。しかしフレッシュさも決して失われていない。聴く度に色んな味わいが楽しめる今ツアー最大の目玉曲だ。7/3の配信終了日まで何度でも聴き返したい。

 

 

M4.「GIRL FRIEND」

 

ライブも中盤戦ということで、定番曲の「GIRL FRIEND」。今年の春は家に籠っている内にあっという間に過ぎ去ってしまったが、この曲を聴いていると心の中に春風が吹き、失われた情感が取り戻せたような気になる。年を食って大人っぽい演奏になっても、この曲の源にある爽やかさは全く失われないなあと、噛み締めながら聴いた。後半の緩やかに盛り上がるギターソロが涙腺に来る。

 

ライブということで、デデデデッ\オイッ/ デデデデッ\オイッ/ と一人拳を突き上げた。たのしい。近年のベボベの曲はそんなにオイオイする楽曲はなく、ゆらゆら横揺れするノリ方が多い。自由にノレるライブなので気風が合っており、好きなように楽しんでいるのだが、「GIRL FRIEND」や「真夏の条件」、「LOVE MATHEMATICS」のような統率されたノリはフェス的なテンションで楽しめるので本能的に好きなのだ。家でお祭り騒ぎ。

 

前回のクソ長かった前髪をツアー中にいつの間にか切った小出のように、撮る時期によってビジュアルが変わるのも「自宅ライブツアー」ならでは。よく見たら関根さんも部屋着スタイルやらツインテやらちょくちょく変わっている。堀くんは一点ロゴTのストック豊富だな。

 

 

GIRL FRIEND

GIRL FRIEND

  • provided courtesy of iTunes

 

 

 

 

MC

 

折り返し地点ではMCも。ベボベといえばやたら長尺でゆるゆるなのに芸人並に面白いMCが印象的だが、この動画も15分弱とたっぷりである。内容からして、ZOOMか何かでプログラマーさんも含めて会話しているようだ。

 

小出にTwitterバトンが回ってこなかった話に始まり、今ツアーが始まった理由まで、3人の近況的な話が聞けて嬉しかった。彼らの人間味がたっぷり詰まったラジオ的感覚で聴ける代物なので、料理中とかに繰り返し聴きたい。にしても、一応MCということで「次の曲行きましょう」って言ってくれるの嬉しいね。

 

ちなみに、ツアーに合わせてFC向けラジオも順次公開されている。ベボベLOCKS!で培ってきたトークセンスが満開のWebラジオも是非聴いてほしい。

 


「Base Ball BearさんのWEBラジオ」特別傑作選 8 (8/10まで期間限定公開)

 

 (M5~8は7/18追記)

 

M5.「どうしよう」

 

後半戦の1曲目は『C2』より「どうしよう」。風刺が効いたファンクチューンが多い作品の中で輝く純な青春ソングだ。再構築の結果、音数はかなり少なくシンプルに、ドラムのリズムが引っ張る形で仕上がっている。その分、小出の歌詞が原曲以上にダイレクトに響き、片思いを胸に抱く主人公の気持ちにシンクロする。どうしようもないほど。

 

土台はシンプルになったが、ギターソロのアレンジはよりドラマチックに響く。特に好きなのは間奏から最後のBメロに入る間の4小節。〈すぐに会いたい〉という気持ちが爆発するのが間奏のギターソロだとして、〈青春が終わって知った〉までの間に置かれた一呼吸で、この気持ちを鎮めようとしているかのような心情が見て取られ、でもやっぱりダメだ!とクライマックスに向かってもう一度爆発する。主人公の心の機微をそのまま反映したようなアレンジだ。これまで青春ソングをたくさん生んできた彼らだからこそ、ここまで正確に、楽曲ぐるみで心理描写を出来たのだと思う。

 

ツアーグッズとして届いたマグカップを何処で使おうか?何だかんだライブだし盛り上がっちゃうから、持ちながらノッたら割っちゃうんじゃなかろうか?と謎の懸念(笑)をしていたら、ちょうどぴったりなこの曲が現れて救われた。苦いコーヒーを飲みながら、瑞々しい青春を味わうのも粋。

 

 

 「どうしよう」といえば、「どうしよう」大好き芸人こととーやま校長もしっかり反応していた。

 

 

このツイートが予言になったのは翌週の話。 

 

 

M6.「新呼吸

 


Base Ball Bear - LIVE IN LIVE~IN YOUR HOME~ M6「新呼吸」(7/24まで期間限定公開)

 

「転校生」以上に度肝を抜かれたチョイス。『新呼吸』より、リードトラックとなる「新呼吸」。かなり作りこまれた楽曲という印象が強く、まさかここで再び相まみえるとは。3人時代のベボベ、「絶対リアレンジできんやろ」って曲を平然とやってのけるから怖い。

 

ベボベファンに楽曲ベストをそれぞれ選ばせたら、「新呼吸」を上位にあげる者が多いと思う。私もそのひとりだ。孤独に寄り添ってくれるような静かな温かさがこもったサウンドに、どこか悲しげでリアリスティックだけど希望を見出そうと藻掻く様が描かれた歌詞。〈にせものみたいな食事〉〈新品の現実〉〈ビニール袋みたいだ〉といった不思議なフレーズに包まれた楽曲は、一度聴いただけでは理解し切れなかったけれど、10年近く聴き続ける内に、静かに身体の隅々へと染み込んでいった。

 

2020年の今リアレンジされた「新呼吸」は、原曲の時代感を持ちながら、「今聴かせるための曲」として再現されたかのような、まさに「新呼吸」という言葉を体現した仕上がりだ。この週はラジオの生放送が初聴きだったが、曲前に添えられた小出のメッセージとイントロで泣きそうになった。新解釈のアウトロは至高。エンドロール風味が原曲より増していて堪らない。残り2曲もあるんか......?と疑ってしまう締まりっぷりである。

 

 

 

 

M7.「changes」

 


Base Ball Bear - LIVE IN LIVE~IN YOUR HOME~ M7「changes」(7/31まで期間限定公開)

 

〈あたらしい朝が来れば 僕は変われるのかなぁ〉と歌った後に、〈何かが変わる気がした 何も変わらぬ朝に いつもより少し良い目覚めだった〉って続くの天才すぎか!? ライブで連続で聴きたい神采配、かつて武道館でも演奏した流れだそうだが(コメント欄で知りました)、正解を叩き出されて鳥肌が立った。ツアーで聴けなかったのが惜しい。

 

コメント欄でもたくさん見かけたが、私も小出がかつてツアーMCで発した「「changes」は当時身の丈に合った詞じゃなくてあまり好きじゃなかった」という言葉を今でも覚えていて。そしてその後に、「でも今は追いついたような気がします」と添え、「この曲を好きになった」とハッキリ言ってくれた。その言葉の通り、年々歌われる度に説得力が増しているように思う。

 

そして今回、改めて「迷いなく歌ってるんだな」と強く思った。また、「楽しんで歌っているな」とも。その高揚感を象徴するようなソロのチキンピッキング。小出の気持ちに呼応し、高まっていくドラム・ベースのグルーブ感。クライマックスに辿り着くまでの過程が見事だったお陰で、辿り着いたときに見えた景色は、いつもより少し新しかった。

 

 

M8.「ポラリス

 


Base Ball Bear - LIVE IN LIVE~IN YOUR HOME~ M8「ポラリス」(8/7まで期間限定公開)

 

「なんやかんや歌ってきたけど結局「バンドって楽しい」に尽きるよね」と、純粋に3ピースバンドの楽しさを詰め込んだ楽曲、「ポラリス」。近年のベボベを象徴する楽曲がラストに配置された。聴き終わった後に残るのは楽しかった!という単純な爽快感のみ。うん、最高。良いライブだった。家で観てるけど、会場を出て少し遠回りをしてから家へ帰りたい気持ち。

 

いや~しっかし楽しそう。特に堀之内さん。今回会場名を叫ぶ機会が無かったから寂しかったが、ドラムソロ後にオォイェェェイ!*1と熱唱。実家のような安心感である。どうせならどっかで「日比谷~!」的に「家~!!!」と叫んでくれてもよかったんだけどね。それだと高取ヒデアキになっちゃうか。

 

新呼吸」や「どうしよう」は緊張の糸をピンと張り詰めていたが、この曲だと逆に超リラックスしている様子が見て取れる。間奏でワウワウする小出さんとかベッドで本読むときのスタイルだし、堀くんはニッコニコだし、関根さんは......めっちゃ真顔であった。この人だけ緊張してるかもしれんしそれも気のせいかもしれん。終盤の三分割カット、堀くんが超楽しそうで何度見ても元気になるんだけど、小出・関根は超真顔でそれも一周回って面白い。楽曲も映像も、ただただ楽しい。それが人生において一番最良の状態なんだよな。

 

感情に語彙が追い付いていないのでこの辺りで締めようと思う。小声の「ありがとう、Base Ball Bearでした~」にアンコールを返したかったが、伝えられるのはコメント欄のみ。書き込んでも実現はしないし、やっぱり早く生のライブを味わいたいけれど、ひとまずはこんなにも楽しい「自宅ライブツアー」を実現してくれたことに、感謝の意を込めて拍手を送りたい。ありがとう、Base Ball Bear!!

 

 

**********

 

先ほどラジオ配信による「閉鎖的なリアルタイム性」がライブ現場に近いものを生み出していると書いたが、その一方、YouTubeを通して世界という外に向けて発信されている面は、やはりライブ現場とは一線を画する面であり、これこそが配信という「3つ目の可能性」を見出したことの意義であると思う。

 

バンドにしろ、アイドルにしろ、どれだけ過去に人気作が出ようと「今」が一番旬だ。ベボベは『銀魂』主題歌になった「Stairway Generation」や、『図書館戦争』の「changes」など、世間的には4ピースのロックバンドとして知られているだろう。だが、一人欠けた後も決して衰えず、むしろどんどん進化している。今回のツアーは、「今」の彼らを知ってもらう大きなチャンスなのだ。

 

対価を払わずに、自宅で、いつでも、だれでも楽しめる。こんな機会は今しかない。誰彼構わず「自宅ライブツアー」の客席へと飛び込んでいってほしい。「LIVE IN LIVE~IN YOUR HOME~」、ぜひご参加ください!

 

 

 

C3【standard edition】(CD)

 

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  • アーティスト:Base Ball Bear
  • 発売日: 2020/01/22
  • メディア: CD
 

 

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*1:これに続く文章を書いた後、「Oh, 家~!」と叫んだ可能性もあったことに気づいた(ないです)