零れ落ちる前に。

その時々感じたことを、零れ落ちる前に。

THE SECOND/ザセカンド

フジテレビ系列で4時間超に渡って放送された「THE SECOND~漫才トーナメント~」が無事閉幕した。「結成16年以上のコンビがタイマンで競う、新たなお笑い賞レース」という、M-1グランプリを前提にして成り立つ大会。企画が発表された当初は「賞レースの呪縛からようやく解放された人達のことを思うと酷ではないか?」とやや否定的な目で見ていたが、芸人さんのラインナップを見たら賞レースオタクとしては俄然期待が高まってしまい、気付けばアーカイブなしの予選生配信も追いかけるようになっていた。

 

両者拮抗の激戦を勝ち抜いてきた大ベテラン8組による渋くて熱い戦い。若手の賞レースほどウェットになりすぎず、しかしひとりひとりの人生やコンビ同士の関係性が滲むドラマもたっぷりな見応え抜群な大会で、長丁場なのに一秒たりとも目が離せなかった。番組の進行も、ゆとりがありすぎるきらいはあったが(尺が足りなくなるよりマシ)、MC側の芸人が東野松本に絞られすっきりしていたこと、そのお陰でネタ中に審査員が抜かれることがほぼ無かったこと、審査員のお客さんがリラックスしていたこと、平場の掛け合いもたっぷり楽しめたこと...など良い要素が重なったことで非常に快適*1松本人志のアンバサダー起用は当初こそ「意識しすぎだろ!」と思ったが、蓋を開けてみれば彼がいないとこんな良い空気は作れなかったと思う。東野MCも番組の空気に合う軽妙さだった。初回ながらストレスの少ない素晴らしい大会だったよ。ほんとうにお疲れ様でした。

 


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選曲もことごとく大会にマッチしてた。OKAMOTO'Sが出囃子に使われる日がくるなんてね。火花~!

 

 

金属バットvsマシンガンズ

初手からいかつい。金属バットは最初ちょっと毒控えめで地上波にチューニングしてるのかな...?とやや心配していたら後半にかけてどんどんドライブしていき大爆笑を掻っ攫った。「下の句怖いねん」「わしすっぽんの意見見てんや思うたわ」等々ツッコミセンスがお洒落でどんどん嵌まるし、小林のボケも高度でスレスレ。ワクチンのくだりはこれぞ金属バット!M-1で見たかった...という悔いはまっちゃんのコメントで抑えられなくなってしまったが、歴史的トップバッターを飾れたのは良かったんじゃないかと思う。超僅差での敗退は惜しいいい...。

 

マシンガンズは寄席型マンパワーゴリ押しモンスター。お客さんの心を掴むのが巧すぎる。彼らが序盤に出てきたことで他の賞レースとは全く違う大会なのだと理解した。ぶっちゃけ芸は苦手な芸風なはずのに、くたびれたおじさん二人がしょうもない愚痴をあーだこーだ言ってる絵面にまんまと嵌められた。今大会史上ぶっちぎりで燻ってる点でも大会趣旨にぴったりな主人公。燻りおじさん達があらゆる愚痴を笑いに昇華していく様は圧巻でした。声を揃えて手を高く突き上げる決め技は何度でも笑っちゃう。

 

\せーの!/

「「子ども2人と犬8匹!」」

 

 

スピードワゴンvs三四郎

世間に名が知れた二組が「俺たちも漫才師なんだぜ」と証明するために殴り合う。点数こそ割れたけど名勝負でした。まずスピードワゴン、小沢さんも潤も抱きしめたくなるBIG LOVE漫才。愛おしき友情劇場に笑い泣き。私も例に漏れず「小沢と井戸田」として認識していたので、スピードワゴンの漫才をリアルタイムでちゃんと見るのは初めてだったが、めっっっっちゃ好きな芸風だったので今すぐにでも劇場にいきたい。小沢さんが「潤!」と呼ぶたびにキュンキュンする。井戸田さんの実況も絶妙で、「大至急」「やいやい!」「決めた、俺この恋よく見る」「ににに人間ポンプ!?」とかいちいちツボ。そうやってちょっとずつくすぐった後に「潤、どうしてここに?」でひっくり返す。「説得力が凄い!」「ハンバーグ!」とか井戸田さんの人生まで乗っけるし勝ちに来てたよ。月曜TheNIGHTでM-1戦士たちを労ってきた大先輩が、まだ賞レースの舞台に上がってくるのがもうカッコイイし、生き様を見せつけられた6分間でした。あと結局うるうるしちゃう小沢可愛い。一生漫才してくれ。

 

対する三四郎は清々しいほどのメタネタ!そりゃ瀧上さんも怒る。ていうか瀧上さんは番組内で擦られすぎて禿げそう(笑) 架空の大会「ザ・サード」のくだりは恐ろしい畳みかけ。審査員ダウ90000、優勝サンドウィッチマン、3位佐久間宣行...と来て、比較的弄りやすいTKOを何段も飛び越しての「キングオブコメディ?」は反則級。3回聞き返すのずるいし上手い。井口との合わせ技「警察に捕まり終えている」も良かったねえ。「三四郎、相田から入るやついねえよ!」は何でこんな擦るんだろう...?とあんまり笑えなかったが、2本目の天丼でやられてしまった。

 

ギャロップvsテンダラー

関西ダービー」はあまりの大激戦に気絶。ハゲネタながら不快にならない絶妙なセンを突いてくる技巧派ギャロップと、不快な場面は多々あるのに異常なテンポ感で押し切ってくる怪物テンダラー。どっちが勝ってもおかしくない場面で、ギャロップが劇的なジャイアントキリングを達成。スタジオの空気も異様だった。ここも「事実上の決勝」と言っても差し支えない戦いだったと思う。

 

ギャロップは「林くんにカツラを被らせたい」という話題だけでどうしてあそこまで広げられるのか。ハゲなりの懸念点が次々と浮かび、その具体性におもしろみがどんどん増していく。林さんは最初こそ不審そうな顔をしてカツラの数を気にしてるのに、だんだんとノリノリになっていくのも愛おしい。毛利さんのツッコミも強めながら上品で疲れないし邪魔にならない。1本目は特に彼らの凄みをビシバシ感じるネタだった。

 

テンダラーは内容についてはベタもベタなので特に言うことはないが、技術が異次元。あんなに倍速で喋って動いて何故噛まない&疲れない???尺が倍あったとしても余裕で続けられるんだろうな。誰にも真似できない匠の技でした。そんなラスボスをギャロップが倒してしまうという白熱の一戦、あの異様な興奮は他では味わえないな…。

 

超新塾vs囲碁将棋

初戦だと最も勝敗が予想できなくて楽しみにしていたカード。第3戦の余韻でなかなか切替が大変だったが、超新塾の賑やかなムードに一瞬で引き戻された。もう楽しいいい!アイクぬわらさんだけを先に知っていたので(ルパパト!)本業で大活躍する姿を見れたのが嬉しい。外国人ネタはちょっと、いやかなり危うくはあったけど...。ニューホライズンや映画泥棒で爆笑を取れるんだから、アテレコとか難しい日本語が読めないくだりとか「てめえのケツの穴に...」とかはやめてほしかった。とはいえ飲み会も映画予告も小気味よくて笑かされっぱなし。大人数漫才って楽しいね。

 

囲碁将棋はもう激ウマ!一気に賞レースっぽい空気に。フリだけで笑わせてくる大喜利っぽいネタで全てがクリティカルヒットだった。「ドとソが出ない」で引っ張るのもそこ!?って感じだけどまんまと笑っちゃいました。途中でボケが入れ替わるのも6分ならでは。マツコ・デラックスクラリネット、ギニュー結弦など魅力的なワードが続々。根建さんが終始闘志を剥き出しにしていたのが印象的。

 

そして最後の平場も名シーン連発。「正」の字を作って笑かしながら、「囲碁将棋のやってきたことは正しい!」と真っ直ぐなエールを送る超新塾、なんて情に厚いおじさん達なんだ。

 

マシンガンズvs三四郎

準決勝のマシンガンズ、ここまで番組内で発生した笑いをすべてネタに吸収してそのままぶつけてくるというおそろしい戦法。もう完全に賞レースじゃなくてライブだけど、ザセカンドという大会を象徴する6分間だった。予選の白熱した試合を集中して見続け、やや疲れ気味の一般審査員と我々視聴者にとってご褒美みたいな時間で、これが中MCではなく出場者なのだから震える。そりゃドッカンドッカンウケますって。Yahoo!知恵袋のプリントを持ち込んだことに賛否が割れていたが、一般審査員はお構いなし。うん、それでいい。あの瞬間来年以降の大会がますます楽しみになった。三四郎も流石の面白さだったけど、先行の勢いに圧倒されたからか疲労があったからか少しフォームを崩していたように見えた。両者とも対戦相手を弄っていたのがタイマンバトルならではで素敵でした。

 

囲碁将棋vsギャロップ

ど、同点て!怖!非常にシビアな結果になったが、両者ともにハイクオリティだったので納得の結果である。囲碁将棋はあるあるのツボを押してくる職業舐めプ漫才。ギャロップは最初こそ派手さはなかったものの、毛利さんの「おじいさーん!」から一気に笑いが加速。囲碁将棋に勝ち上がってほしい気持ちはあったし悔しいが、どっちが勝ってもおかしくない名勝負であった。「事実上の決勝」として申し分なし。平場で林さんが高身長男子達の間に収まっていたのが可愛かったね。

 

マシンガンズvsギャロップ

そして迎えた決勝戦。 超マンパワーvs超技巧派という真逆の対決、しかしどちらも地味~なおっさんというザセカンドでしか成り立たない完璧な布陣である。

 

先攻・マシンガンズの「3本目がない」は噓偽りなく本当です、と今日の『ザ・ラジオショー』でも言っていた。何なら直前に新ネタの打ち合わせをしていたらしい。ハート鬼か。「事実上の決勝」を弄る、決勝戦を「余興」とクサす、松本人志へのハマらなさを愚痴る、ネタを用意せずにこの場に立ったことを自慢げに話す、審査されることへの不満も溢す、しまいには客席へ「優勝させてください!」と懇願する。2本目ほどの勢いもなく、だいぶ疲れも見えてミスも多い。それでも不調っぷりを全て回収し、1から10まで正直に喋り尽くし、6分間のライブを走り切る。賞レースの決勝でこんなにも自然体になれることがあるのか。格好良かった。格好良すぎだよ。「「楽しいな!」」の大ジャンプは生命の美しさすら感じた。勝とうが勝たまいが、ものすごく良いものを見せてもらった。

 

対する後攻のギャロップ。こちらは打って変わってとんでもない緊張感のネタだった。「「パァァン!」」の一点に賭けた究極の引き算*2。誰もが終点を知っているのに、一人喋りで4分間も引っ張り続け、きっちりと大爆笑を掻っ攫うハートの強さよ。ふつふつと弱火にかけられる4分間、最初こそ不安に思う瞬間もあったけど、気がついたら林さんの喋りに身を委ね肩を震わせていた。ドッカンとスパークした瞬間の快感は番組のクライマックスに相応しい。結果的に「ネタ」として評価されたギャロップの圧勝となったが、忘れられない名勝負だった。

 

さまざまな反応

 

 

 

 

 

 

 


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諸々の解像度の低さで理解していただけたと思うが、私は00年代にまったくお笑いを見てこなかった人間なので、オンバト世代やエンタ世代、レッドカーペット世代が懐かしい、変わってないと盛り上がれるのが心底羨ましい。今すぐタイムリープしたい。でもそんなお笑い全盛期の生き霊たち(?)と、当時を知らない私のような人間が一緒になって熱くなれる番組って最高だな~~~と思いました。大会後の芸人のラジオからも過去を懐かしむような空気が漂ってて、特にオードリーの二人が昔話ばっかしてたのがよかった。「未来の話しろよ!」笑

 

それと、賞レースなのに和気藹々とした空気が終始続いたのもとても見やすく、中堅からベテランの芸人たちの余裕を感じられて頼もしかった。予選の時の平場もYouTubeで全部見たが、長年付き合いのある先輩後輩や、初共演の組み合わせまで幅広く、芸人同士の様々な交流が見られたのも今大会の収穫のひとつ。一緒に飲みに行ったり、果てはライブで共演したり。今決まってるのだとガクテンソク×ギャロップマシンガンズとか金属バット×東京ダイナマイトとか面白そうだね。今後も楽しい組み合わせが出てきそうなのでライブシーンを注視していたい。す~ぐ忘れてしまうけど。何ならザセカンドツアーをやってほしいな!

 

そして来年、再来年と歴史を紡いでいってほしい。М-1のような権威にならなくて良い。ベテランの芸人たちが、今年はちょいとチャレンジしてみよっかなくらいの感覚で出られるような、程よい熱量の大会として続いてほしいんだ。Twitterでは巨人師匠が特技のおじさん構文で「あの場所で漫才をやって見たいなぁ~」と呟いていた。そういう超大御所の参戦もサプライズ性があって面白いかもね。一般審査なら優勝できるかもわかんないし。個人的には今年ベスト32で惜しくも敗退したハインリッヒ姉さんに勝ち上がってもろて、お茶の間を異世界に引き摺り込んでほしいです。

 

 

*1:実際かなり注意深く設計された番組構成だったらしい。ルール設計も理想的な形だったと思う。囲碁将棋vsギャロップはやや荒れたけど3点の数の多さで測った方が個人的には納得

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*2:ってセカおじが解説していました


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