昼頃Twitterを開いて目を疑った。
昨日のお酒がまだ残っているのかと思うくらい、夢かと思った。
【お知らせ】
— NUMBER GIRL (@numbergirl_jp) 2019年2月15日
RISING SUN ROCK FESTIVAL 2019 in EZOへの出演が決定致しました。#numbergirl#ナンバーガール pic.twitter.com/BeB91y7kEV
あのNUMBER GIRLが、復活するらしい。
ここで「俺の青春はNUMBER GIRLに始まり、NUMBER GIRLで終わった」などという話を出来たら面白いんだろうし、きっとそういう話をされる方はこれからわんさか出てくると思うんだけど、あいにく私にはそういう話はできない。もう最初からハッキリ言っておくと、世代でもないし大ファンってわけでもないのだ。
私にとっての印象は、「だいぶ昔にいなくなったバンド」。それも一瞬。1995年から2002年という7年間しか活動してない。いやまあ7年あれば赤ちゃんは小学生になるし、小学生は中高生になるくらいの長さだから長いといえば長いのだけれど、他のバンドと比べると、もっと続けても良かったんじゃないかな~と思ってしまうような長さである。そして当時の私は『いないいないばぁっ!』を見ていたような年齢だったので、当然ナンバガは聴いたことがなかった。いや、あんな轟音聴いてたら確実に鼓膜破れるし。もしナンバガを聴いて幼少期を過ごしたような方がいるなら是非とも話を聞いてみたいものだ。
で、私がナンバガを初めて聴いたのは、それよりもずっと後。大学生になりたての頃である。その頃からBase Ball Bearの大ファンである私は、ベボベの全てを知りたいと思っていた。どんな人達が演奏しているのか。どんな経歴を持つのか。バンド結成時はどんな感じだったのか―――。そのうち、彼らが影響を受けたバンドの一つとして出会ったのがNUMBER GIRL、略称ナンバガだった。聴いてみたいな~と思っていた時、大学のサークルの先輩がファンだと知り、早速借りた。アルバムが2枚とライブアルバムが2枚。これで全部というわけではないが、ラストアルバムを除いてほぼ揃っている。なるほど、お手頃だ。すぐにでも全曲聴けそう。
そしてiTunesに入れ、iPodから流れるNUMBER GIRLを聴いた。「ベボベが影響を受けたっていうんだから、詩的な歌詞と4つ打ちビートが気持ちいい青春ロック的なやつなんかな~」と思っていた。イヤホンから流れてきた音は、その想像と真逆も真逆だった。
轟音。そう、耳に入ってきたのは「轟音」だった。何を言ってるのか聞き取れない歌詞と、耳を劈くような激しい音。心地良さなんてもっての外。ただただ「うるさい」と思った。90年代のロックファンはこんな音楽に惚れたっていうのか。「激しい系」が苦手だった私は、すぐさまNUMBER GIRLをiPodから削除した。
それから2年、iPod内を整理していた時。何となく、久しぶりにNUMBER GIRLを聴いてみたいと思い、iPodにまた入れた。ジャズサークルに入っていたため、一時期はベーシーやネスティコ、ロブパートンなどビッグバンド系をとにかく聴いていたのだが、サークルを引退すると反動のようにロックを聴きたくなっていたのだ。往年のスウィングと真逆のようなものを聴きたい。とにかく何か激しいやつを。そうして再び巡り合ったナンバガは、私に「生の実感」を与えてくれた。
特にのめり込んだのが、『サッポロOMOIDE IN MY HEAD状態』というライブアルバム。2002年11月30日に札幌で行われたNUMBER GIRLのラストライブがそのまま収録された貴重な1枚である。事実上最新のナンバガはこのアルバムを開くことで味わえる。その「最新」が17年ぶりに更新されるのが今度のライジングなので、恐ろしく凄い話だ。とにかく、このライブアルバムを何度も何度も聴いた。ナンバガというバンドの良さが濃縮されたアルバムは、いつでも疲れた私をハイにしてくれた。ナンバガを聴くと血が巡るのだ。
熱狂的な客の歓声。太く鳴らされるギターの音色とそのまま奏でられる美しいアルペジオ。そして耳を傾け鎮まった観客を一気にノせる激しい4人の轟音―――。『I Don't know』から始まる伝説のラストライブは、その激しい衝動そのままに100分を一瞬で駆け抜ける。映像は見たことないのに、情景が浮かんでくる。
個人的に好きなのは「Zegen vs Undercover」と「透明少女」。このライブにおいて、この2曲はどちらも向井秀徳独特のMCから始まる。「Zegen~」は「売れる売れない二の次で/格好のよろしい歌ば作り/聴いてもらえりゃ万々歳/そんなアタシは傾奇者/人呼んでNUMBER GIRLと発しやす」という前口上がイントロのアルペジオに合わせて入り、「やばいさらにやばいバリヤバ」の合唱が起こる。まずこの一連の流れがナンバガ節で、他じゃ中々味わえない。
「透明少女」は「嘘っぽく嘘っぽく笑うのが好きな女子がおりますねぇ/嘘っぽく笑っとるつもりが全部見え見えなんやよね/でもそういう女子は嫌いでも好きでもないねぇ/そんな彼女が透明少女なわけよ」と、突然女子を語る一幕から始まる。最初聴いた時「何言い出すんだこのオッサン」と思ってしまったのだが(「Zegen~」も実は初めて聴いた時少し引いた)、その「そんな彼女が透明少女」という言葉を聴いた途端に入る田淵ひさ子の激しいギターイントロがハチャメチャ格好良いのだ。この緊張感といったらない。アルバムを流すたびにニヤニヤしてしまうポイントだ。
もちろんイントロの衝撃だけでなく、曲全体として素晴らしい。耳から入った音楽が(いや「音楽」というのも何か違う気がする。「衝動の黒い塊」というか)、全身を駆け巡る。五感で、もはや第六感も使って感じることができるのがNUMBER GIRLの音楽なのだ。狂ったシャウトが、激しい轟音が、極太い低音が、暴れまわる打撃音が、全身を震わせる。
今回の再結成について、向井秀徳はこのようなコメントを残した。
2018年初夏のある日、俺は酔っぱらっていた。そして、思った。
またヤツらとナンバーガールをライジングでヤりてえ、と。
あと、稼ぎてえ、とも考えた。俺は酔っぱらっていた。
俺は電話をした。久方ぶりに、ヤツらに。
そして、ヤることになった。
できれば何発かヤりたい。
何かもう、笑ってしまった。私は向井秀徳を直接見たことがないし、あまり深くは知らない。けれども、MCでぶっきらぼうに「NUMBER GIRLと発しやす」と言っていた彼に対するイメージは、コメントにそのまま表れていた。
解散したバンドが再結成することに関しては色々思うことがあるだろう。ファンなら尚更その思いが強いはずだ。「あの時もうやらないって言ってたじゃん」とか。でも向井秀徳に「ヤりてえ」「稼ぎてえ」というシンプルすぎる理由を出されてしまっては、もう何も口出すことはない。胸にあるのは、「生で観たい」という気持ちだけだ。
彼らの音楽を聴くと、熱狂を「観た」ような錯覚に陥る。ライブを観たこともないというのに、ライブハウスで暴れ狂ったような快感を得た気になるのだ。でも、これまでのように耳で「観る」のではなく、両の眼で「観る」機会があるというのならば。是非観てみたいじゃあないか。
90年代を生きたロキノンおじさんではない、むしろその世代を知らない一介の若僧の戯言でした。活動再開、本当におめでとうございます。何としてでも観に行きたい。
(それにしても、自分の好きなコンテンツの復活案件が多くて最近怖い。健くんが良ちゃんをまた演じたり、真司くんと編集長が再会したり、走先生がまた暴れたりと、時空歪んでるなあ......)
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