零れ落ちる前に。

その時々感じたことを、零れ落ちる前に。

積んで、崩して。(2020年10月)

「読書の秋」を決意して図書館に足繁く通った割には、日々の邪念に憚られて思うように崩せず、本ツムツムな秋でございました。「秋好きなんだよね」と公言する割には金木犀の匂いも特段好きではないし、「◯◯の秋」も大体未達成で終わるし、活躍する間もなく一気に冷え込んで冬氏が顔を覗かせているのですが、果たして私は秋氏のどこが好きなのでしょうか。無味無臭なところ?そんなことじゃあ結局「そんなに好きじゃなかった」と言って簡単に別れちゃうんじゃないすかね。悲しみのサンダー。そんな浅い見方じゃ他者を理解ことなんて到底できないよ、というところで今月も読書録に参りましょう。秋篇最終回(全2回)。NHKドラマでよく見る表記だコレ!

 

 

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目次説明

①「積んで、」:今月分までの積ん読。先月からの繰越分も含む。

②「崩して。」:先月までに積んで、今月崩した(読んだ)本。

③「積んで、崩して。」:今月積んで、今月崩した本。

 

このような分別をし、①については軽く紹介、②、③については感想を放流していきます。購入時期とか購入場所はその時の気分で。図書館で借りた本は①か③に含みます。積むかどうかは俺が決める。

 

なお、紹介時に書いた西暦は、単行本の初版発行年で統一してあるはずです。よって、Amazonの記載とズレる場合もありますので悪しからず。あんまり頑張るつもりはありません。

 

ブクログはこちら。本屋で気になった本をどんどん取り込んでいくのがマイブームです。体力がないので荷物が少ないときによくやります。本棚を眺めているとこの時何に興味があったかとか、誰かから聞いたから入れたんだろうなとか、細かい記憶も辿れますね。

 

booklog.jp

 

 

①積んで、

計:21冊

 

加藤秀一『はじめてのジェンダー論』(2017年)

 

はじめてのジェンダー論 有斐閣ストゥディア
 

 

アイドルの和田彩花さんとライターの鈴木みのりさんによるオンラインイベント「フェミニズムの可能性と限界(?)」 『私の未来は私が決める!vol.4~和田彩花リモートトーク企画~』にて紹介。ジェンダーを「社会的性差」、セックスの対義語として定義せず、下記のように定義して論じているところに、他にはないあたらしさがあった。

 

私たちは、さまざまな実践を通して、人間を女か男か(または、そのどちらでもないか)に〈分類〉している。ジェンダーとは、そうした〈分類〉する実践を支える社会的なルール(規範)のことである。

(中略)

たとえば、男の方が女より平均的な筋肉量が多いという科学的認識も、男は理性的で女は感情的といった単なる偏見も、男は家族を経済的に支えるべきもので女は家事・育児を引き受けるべきものといった性役割の観念も、いずれも人間を男と女に〈分類〉する実践のバリエーションです。このポイントさえ理解すれば、性別に関係するさまざまな種類の現象たちの間のつながりを、よりすっきりと見通せるようになるでしょう。

(「はじめに」ⅱ、ⅲ)

 

固定観念、常識として(違うとわかっていても)染み付いてしまっている性差の考え方に、根本からメスを入れていくような本なのだ。タイトルのような模範的教科書的「ジェンダー入門書」ではないところに好感を持った。

 

 

 

・森山至貴『10代から知っておきたい あなたを閉じこめる「ずるい言葉」』(2020年)

 

10代から知っておきたい あなたを閉じこめる「ずるい言葉」

10代から知っておきたい あなたを閉じこめる「ずるい言葉」

  • 作者:森山至貴
  • 発売日: 2020/08/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

編集者の野地洋介さん、ライターの生湯葉シホさんによる「元気が足りないラジオ」にて紹介。このラジオは信頼できる先輩から教えていただき、早速拝聴したところ、自分の好みとベストマッチして放送分は完走してしまった。読書の感想から色んな話題に派生して、お二人がじわじわと盛り上がっていくゆるい雰囲気が好きです。内容も病気からアンチ共食、推しの話、アニミズムと幅広い。

 

 

この本では「あなたのためを思って言っているんだよ」「そのうち気が変わるんじゃない?」「最近は普通の人間が生きづらくなった」といった、誰しもが言われたことのある、もしくは言ったことのある「ずるい言葉」が何故ずるいのか?を10代目線で紐解いている。

 

Amazonのイメージプレビューを見てもらえばわかるが、中学生と大人の対話風に事例を紹介しており、誰でも飲み込みやすくなっている。その後に、言葉の裏に潜む相手を黙らせようとする意図を丁寧に見抜き、抜け出すためにはどう配慮すべきかを解説してくれる。序盤しか読めていないが、中高生の時に読めたらどれだけ救われただろうかと考えてしまう良書だ。また、昔言ってしまったことを思い出し、反省もしている。誰しもが29の事例のうちのどれかに対し、言う側または言われる側に所属してしまったことがあるのではないかと思う。

 

なお、森山至貴氏は先月積んだ書籍にも名があり、偶然の再会を果たした。この書籍にもクィアスタディーズの視点が含まれているようだ。

 

 

 

・エレン・ストッケンダール ニナ・ブロックマン 池田真紀子訳『世界中の女子が読んだ! からだと性の教科書』(2019年)

 

世界中の女子が読んだ! からだと性の教科書

世界中の女子が読んだ! からだと性の教科書

 

 

ノルウェー医学生2人が性教育について積極的に学び、各地で講義をしたり、ブログを書いたりする中で学んだことを一冊にまとめた女性向け「性の教科書」。男性ではあるが、正しい知識を得ておきたいと思い、書店で見つけた後にKindleで購入した。書店で買うのを憚られてしまうあたり、自分はまだまだ性のことをタブー視する面があるのだなと反省している。

 

興味を持った理由は色々あるが、もしこの後の人生でパートナーを持つことになった場合、確実に知っておかなければならないと思ったからだ。保健の授業で学んだのは遠い記憶で、女性経験も乏しいため、基本的な理解さえままならない。異国の医学生からとことん学びたい。

 

しかし、これを機に男性向け「性の教科書」も出してくれないだろうか...。作品やネットから偏った知識を得るような流れはもう私の代で断ち切るべきだと思うのだが。そういう書を知ってる方がいたらぜひ教えてください。

 

 

www.ted.com

なおTEDトークでも有名なお二人である

 

 

 

・香月孝史『「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う』(2014年)

 

 

アイドルをめぐる言説を冷静に分析した文化批評書。 事例にAKB48ももクロ、『あまちゃん』が紹介されている辺り、今とは違う時代感を思わせるが、きっと通ずるものはあるんじゃないかと思い、図書館にて借りた。

 

SNSや『現場』を通じてファンと共同で今日的なアイドル像を更新している現状を観察する」と背表紙にあるが、この「今日的」はSNSの進化によってより混沌としたものになったのではないかと思う。まだ1頁も開けていないのに早急すぎるが、2020年の時代を捉えたアイドル文化批評も読んでみたい。

 

 

・マッテオ・モッテルリーニ著、泉典子訳『世界は感情で動く――行動経済学からみる脳のトラップ』(2009年)

 

 

「何で借りたんだろう?」と首を傾げたが、タイトルを読み直してピンときた。骨しゃぶりさんの「行動経済学」に関するブログを読んだからだ...。良書なのか全くわからないが、とりあえず積んどきます。

 

 

・ヤン=ヴェルナー・ミュラー著、板橋拓己訳『ポピュリズムとは何か』(2017年)

 

ポピュリズムとは何か

ポピュリズムとは何か

 

 

「〜イズム」という言葉が蔓延しているが、そのひとつひとつの意味を精査したことがないな〜と思い、図書館の政治コーナーを回った。直球タイトルだったので手に取った。

 

 

 

・小原雅博『東大白熱ゼミ 国際政治の授業』(2019年)

・宇田智子『本屋になりたい ――この島の本を売る』(2015年)

・坂爪真吾『性風俗のいびつな現場』(2016年)

・渡辺尚志『百姓たちの江戸時代』(2009年)

・森山至貴『LGBTを読みとく ──クィアスタディーズ入門』(2017年)

最果タヒ『「好き」の因数分解』(2020年)

・橋本陽介『「文」とは何か 愉しい日本語文法のはなし』(2020年)

・福永勇二『イラスト図解式 この一冊で全部わかるネットワークの基本』(2016年)

・『現代思想 2020年3月臨時増刊号 総特集◎フェミニズムの現在 (現代思想3月臨時増刊号)』(2020年)

上野千鶴子『思想をかたちにする 上野千鶴子対談集』(2015年)

西加奈子サラバ! (上)』(2017年)

・辻村七子『宝石商リチャード氏の謎鑑定』(2015年)

宇多丸高橋芳朗、DJ YANATAKE、渡辺志保『ライムスター宇多丸の「ラップ史」入門』(2018年)

・田中道昭『GAFA×BATH 米中メガテックの競争戦略』(2019年)

三上延ビブリア古書堂の事件手帖 ~扉子と不思議な客人たち~』(2018年)

 

 

 

②崩して。

 

松浦理英子『奇貨』(2015年)

 

奇貨(新潮文庫)

奇貨(新潮文庫)

 

 

レズビアン女性と、ホモソーシャルなコミュニティを苦手とする中年男性が共同生活を送る「奇貨」、とある田舎の女子高校生が、事件で死んだ後輩の死因が女性間の恋愛のもつれだと知り、歪な創作意欲をかきたてる「変態月」の2篇が収録されている。あらすじの通り、共にレズビアンが登場する作品であり、著者の松浦氏はセクシャルマイノリティが登場する作品を描くことが多い。そのセクシャルマイノリティを主題にするわけではなく、マジョリティとされる異性愛者と同様に一個人として登場させ、時々マイノリティならではの感性が表れるというバランス感がある。

 

例えば「奇貨」で登場する女性は、性行為を受け入れたくせにフッた相手に動揺し、〈半端ヘテロ〉と名付けて怒ったり、その恋について友達と相談し悩んだり、普遍的な人物としてそこにいる。なお、「ヘテロ」とは「ヘテロセクシュアル」、すなわち異性に性的な感情を抱くセクシュアリティを指す。異性愛者でありながら、同性愛者へ理解を示すかのように装い、遊びで性行為を求める人に対して怒りをぶつけているわけだ。このようなレズビアン女性と同居男性の会話がリアルに描かれている。

 

そういった世界が立体的に存在していたのが、異性愛者が登場する物語ばかり読んできた自分にとって新鮮だった。

 

 

 

 

③積んで、崩して。

計:3冊

 

・森貴史『<現場>のアイドル文化論』 (2020年)

 

<現場>のアイドル文化論

<現場>のアイドル文化論

  • 作者:森 貴史
  • 発売日: 2020/07/03
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

カントリー・ガールズ、元ハロプロ研修生北海道であり、現Juice=Juiceに所属する稲場愛香さんのことを真剣に追いかけ、時にこじらせ、どうしようもなく愛している大学教授の現場録。「文化論」と書いているが、異常に詳細な現場レポである。序盤から雑誌『B.L.T.』のインタビューを引用したり、彼女が出演したローカル番組の聖地巡りについて触れたり、痒いところに手が届きすぎている。あらゆる〈現場〉に足を運ぶことで感じた違和感や面白さ、こじらせていく感情など、一オタクとしての内面描写も丁寧で、オタク像を知ることも好きな私は、時に頷き、時に驚愕しながら、楽しく読ませていただいた。

 

著者は齢40にしてアイドルに初めて触れたというが、元々学生の研究に付き合う上でサブカルチャーへの抵抗感は薄いのか、ハロオタに順応するのが超早い。そもそも初現場が「ハロプロ研修生北海道定期公演 Vol.4」というのが行動力鬼ヤバおじさん。まあ在宅派の内に彼女の卒業がアナウンスされ、その寂しさを埋めるためカントリーの2015秋冬ツアーと『気絶するほど愛してる!』を狂ったように見返していたらしいので、反動で北海道まで行ってしまうのはオタク心理としてわからなくもない。元は「嗣永桃子論」を書いたゼミ生のせいでハロオタになったのだが、その後現場で出会うオタ達と仲良くなり、彼目線でオタクの生態を知れるのも人間関係エピソードとして面白かった。

 

ライブツアーの感想やドラマのエキストラ参加録、ドラマ『武道館』と舞台『タイムリピート』への熱量たっぷりな批評など盛り沢山だが、一番好きなのは梁川奈々美卒コンにおける稲場オタの心情。Juiceとカントリーの合同ライブだったわけだが、当然カントリー側に稲場さんが登場することはなく、そこで著者はようやく「カントリーの稲場さんはもういない」と気づく。そして、大好きな『恋はマグネット』に彼女が不在という現実を前にして、涙が止まらなくなってしまう。やなみんの卒コンなのに、と本人も反省しているが、オタクの数だけ視点があるのだなと思わされた一節だった。ちなみにこの後、卒業コメントで「まなかんだけがやなみんにハグしなかった」事態に冷や汗が止まらなかった話も臨場感溢れまくってて、笑うところではないのに笑ってしまった。

 

このように、オタクの奇妙な生態を楽しめる人にはおすすめの一冊である。

 

 

 

・チョ・ナムジュ著/斎藤真理子訳『82年生まれ、キム・ジヨン』(2019年)

 

82年生まれ、キム・ジヨン

82年生まれ、キム・ジヨン

 

 

映画化でも話題になっている韓国のベストセラー小説。内容を全く知らずに読み始めたが、なるほど、多くの女性が「これは私の物語」と深く共感する理由がわかった。真綿で首を締められるようにじわじわと痛みを帯びていくキム・ジヨンの人生に、心を痛め、決してフィクションではないなと思った。

 

衝撃的な大事件が起こるわけでもない話だが、確かに存在している女性蔑視、男尊女卑の社会が、彼女の人生を各所で阻む。女性蔑視を持ち合わせず、まともな人間に属する夫でさえも、幼い頃からの常識に縛られ、彼女に向ける本心が尽く裏目に出る。男性目線としては、この相互理解の難しさを痛感した。問題の根深さを突いているのが、以下の一節である。

 

「子どもがちょっと大きくなったら短時間のお手伝いさんに来てもらえばいいし、保育園にも入れよう。それまで君は勉強したり、他の仕事を探してみればいいよ。この機会に新しい仕事を始めることだってできるじゃないか。僕が手伝うよ」

チョン・デヒョン氏は本心からそう言い、それが本心であることはよくわかっていたけれど、キム・ジヨン氏はかっとなった。

「その「手伝う」っての、ちょっとやめてくれる?家事も手伝う、子育ても手伝う、私が働くのも手伝うって、何よそれ。この家はあなたの家でしょ?あなたの家事でしょ?子どもだってあなたの子じゃないの?それに、私が働いたらそのお金は私一人が使うとでも思ってんの?どうして他人に施しをするみたいな言い方するの?」

やっと結論が出て一件落着したのに、またいきなり腹を立てているみたいで、キム・ジヨン氏はちょっと申し訳なく思った。当惑顔で口ごもる夫に、先にごめんと言い、チョン・デヒョン氏は大丈夫と答えた。

 (p136〜137)

 

『逃げ恥』でもみくりさんが同じような怒りを表明していたように、ある程度理解がある人でも「男性は仕事、女性は家庭」の意識が抜け切らない。自分の将来を考えても、パートナーが出産することになった際、どう立ち回るべきなのか。パートナーとどうやって生活を続けるべきなのか。出産について考える際、母が笑いながらよく話す「あんたの父さんはあんたが生まれた時仕事で立ち会ってくれんかってん。酷いやろ?」という言葉を思い出す。もう笑い事じゃない。

 

この小説に対し、「私の方がもっとひどい目にあってる。キム・ジヨンは全然ましだ」なんて声も上がっているという。たびたびトレンドに上がる「手取り◯万円」に対し、不幸自慢で争う人たちのことを思い出す。戦うべき相手は個人ではなく、社会なのだ。それを自覚せずに同じ穴の狢であり続けると、自分の人生が社会に歪められていたことにさえ気付かずに生涯を終える。そんなのはまっぴらごめんだ。男性だからといって当事者意識を捨て、他人事にするのではなく、社会の歪な構造をもっと理解し、改善に向けて声を挙げなければならないと思った。

 

 

 

・宮野 真生子、磯野 真穂『急に具合が悪くなる』(2019年)

 

急に具合が悪くなる

急に具合が悪くなる

 

 

とんでもない本に出会ってしまった。「命がけで」という言葉は世に蔓延し、もはや浅い言葉になっている印象があるが、文字通りの状況下でここまで真剣に人生と向き合った本をこれまで見たことがない。短い言葉で纏めるのは野暮なんじゃないかと思うが、一応書けることを書いていく。

 

「急に具合が悪くなる」可能性を秘めた哲学者の宮野氏と、その知らせを受けた人類学者の磯野氏が、10通の往復書簡を通して、病気とは、医療とは、生きるとは、出会いとはといった疑問に対し、自身の専門を用いながら真剣に議論する。その途上、宮野氏は本当に急に具合が悪くなり、予定調和のない展開が進んでいく。「7便 『お大事に』が使えない」では、目に見えて悪化する宮野氏に対し、病人と健常者の会話に存在する「ルール」へのもどかしさを語る磯野氏が、最後に以下のような発破をかける。

 

(前略)

でも、それでもなお、私はこのルールを踏み越えることにしました。その理由は、私にとって宮野さんはがん患者でも病人でもなく、まずもって哲学者であり、その哲学者ときちんと言葉を交わした先の風景を見てみたいと感じているからに尽きます。

この書簡を始めるにあたり、私は、宮野さんの病気のことを避けて話すのはとても難しいといいました。私たちの関係ががんについて話すことから始まった事実があるからです。そうしたら宮野さんはまったく避ける必要はないと言ってくれました。打ち返すから大丈夫だと。でもさすがにこのボールは、ストライクゾーンに入っているかが若干不明で、打ち返すどころかぶつけてしまう懸念を感じます。そして宮野さんは、たとえぶつかってもぶつかっていないようなふりもできる人です。だから余計に怖い部分もあるのですが、私はこういう人間なので、いま素直に思っている言葉とともに全力で直球を投げることとします。

宮野にしか紡げない言葉を記し、それが世界にどう届いたかを見届けるまで、絶対に死ぬんじゃねーぞ。

(p152〜153)

 

この覚悟を決めた投球から、限界に挑む戦いが始まる。生への執着、偶然性を生きることの意味、他者と関係性を作り上げるとはどういうことなのか。これまでの問題意識に対し、哲学者生命、人類学者生命のすべてを賭けて挑む。ティム・インゴルドや九鬼周造らの先行研究を用いながら、真理を突き詰めていく。その生き様もそうだし、導き出した解が美しすぎて圧倒されてしまった。涙を流すというより、生き様に圧倒されて完全に言葉を失った。

 

note.com

 

ご本人が言う通り、この内容に対して口をつぐむことはよくないことなのかもしれない。だが、「私が何か言える立場にはない」から言葉を失っているのではなく、2人の闘争に入っていけるほど言葉も経験を持ち合わせていないから、言葉が出てこないのである。

 

陳腐な結論で申し訳ないが、私は宮野さんが辿り着いた答えと同程度の解を導き出せるような、充実した人生を送ってから死にたい。それまではこの書簡を心の片隅にしまい、自分の人生における正解を模索していきたい。そして、たまに立ち止まって、この「人生のバイブル」を読み返したいと思う。

 

なお、この本を知った理由も上記と同じラジオである。心臓発作で倒れた経験がある野地氏が「俺の本だ」と涙を流したそうだ。病気をしたことがある人、これからするかもしれないと不安に思っている人は手にとってみる価値があると思う。

 

 

 

 

  

 

 

〈あとがき〉

見ての通り読了した本は片手で数えられる程度で、積ん読も積んだまま全く崩れない(崩そうとしない)ため、「読書の秋」とか口が裂けてもいえませんでした。秋バイバイ...。

 

とはいえ、今月出会えた本はかなりの良書揃いで、ラジオとともに色々教えてくれた友人には非常に感謝しております。Twitterでもそうだけど、他人が張っているアンテナって自分にはないものなので、自分の内に籠ってるばかりじゃ絶対にキャッチできないんですよね。色んな人と雑談をし、視野を広げることは大事だな〜と痛感しました。こうした状況下ではありますが、コミュニティを広げられるように頑張ります。

 

11月は小説をたくさん読みたいな。ではまた。

 

 

 

【2020年9月】

 

exloyks.hatenablog.com