零れ落ちる前に。

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感想『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』第48話でついに辿り着いた「正体バレ」という展開、あるいは快盗・警察の胸中について

快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』第48話「仮面の下の素顔」。皆さん無事視聴できましたでしょうか。

 

「今年の戦隊は快盗と警察によるVSモノ!」と番組が発表され、1話が放送された時から、最終的に「正体バレ」回が来るやつだと誰もが感付いていたと思います。これは最後まで見続けたら、絶対に面白い展開が見られるぞと。『ルパパト』という作品のテーマ的に、一番の見所かつ、確実に保証されたクライマックスの展開。途中コケようが、絶対ここだけは間違いないとほぼ確信し、1年間追い続けてきました。そして前回。ようやくその時がやって来たのです。

 

 

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邪悪すぎる敵の策略の末に訪れた、全世界の人間の前での「正体バレ」という、これまた邪悪すぎる展開。快盗の覚悟、警察の驚嘆と失意。様々な想いが混ざり合い、辿り着いた先は、想像よりもずっと切なく、ずっしりと重いビターな結末でした。熱さはもちろんだけど、切なさがもう止まらない。人間関係や心理描写が丁寧に積み重ねられてきたからこその到達点だと思います。

 

「正体バレ」という展開を乗り越えてからが本番だ、というのは理解しているのですが、ここで一度この展開に向けて彼らがどのような道を辿ってきたのかを一度じっくりと考えてみたい。そのため、今回の記事はいつもより分量・質ともに厚めにお送りしようと思います。残り3話、怒涛のクライマックスを迎える前に、一読いただきたいです。

 

 

 

 

 

ドグラニオの格上げと、その策略による「正体バレ」

まずは正体バレに至る過程と、対ゴーシュ、そしてその後の対実験体における共闘までの本筋について。ノエルを誘拐し、切り刻む実験をしようとしたゴーシュに対し、ドグラニオ様が珍しく提案。「より面白くしよう」と、ノエルの公開処刑を全世界の人間に向けて行うことにしました。考え付くことがエゲつない。

 

ノエルにとってドグラニオ様はアルセーヌの仇なので、怒りに震えないわけがありません。「アルセーヌを殺し、コレクションを奪った目的は何だ?」という決死の問いに対し、「面白そうなものがあった。だから手に入れた」と答えるギャングのボス。この凶悪さにも痺れましたね。「快楽主義」の悪こそが純粋にドス黒く、最も厄介なのだ。

 

思えば今週は「正体バレ」回であるだけでなく、ドグラニオ・ヤーブンという悪役の格上げ回でもありました。正直前回までのドグラニオ様は快盗VS警察VSギャングラーという構図において、3つ目の親玉でありながら、「因縁」という点においては蚊帳の外にいたんですよね。快盗にとっての一番の敵はザミーゴだし、警察にとっては「ギャングラー」という組織全体だったので、「ドグラニオ・ヤーブン」という個人には矢印が刺さりづらかった。しかし、今週ノエルがドグラニオと対面することで一気に「因縁」の矢印が彼に突き刺さりました。これで一気に警察の目線が彼に届いたことに。

 

そして更に、悪役個人としての格を高めたのが、「ギャングラーのボス」からの脱却です。これ、一見格下げ行為に見えますけど、「ギャングラーのボス」という足枷を外すことによって、元々彼の中にあった「快楽主義」という行動原理が一気に純度の高いものになったんですよね。「面白いから」ノエルを公開処刑にし、「面白くないから」ゴーシュを切り捨てた。

 

「ギャングラーのボス」という立場を守るならゴーシュをここで切り捨てるのは悪手だったと思うし、部下を立てる彼ならやらないはずなんです。でも切り捨てたのは、「もっと面白いものが見たい」から。純度の高い悪意を解き放ったことで、「ドグラニオ親分」という枷を外し、「ドグラニオ・ヤーブン」という1人のギャングに戻った。ザミーゴの「昔に戻ったのか」という発言からも、彼のかつての人物像が窺えます。この行為によって、「ドグラニオ・ヤーブン」という1人の強大な敵が誕生したのでした。

 

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そして、ドグラニオによって促される快盗の「正体バレ」。「面白そうなことをしたい」という行動原理と、「待っていたぞ快盗ども」という発言から、端からやりたいことはこれだったんでしょう。公開処刑という形で同時中継を行ったのも、全世界に向けて快盗の正体を発信するため。正直言うと、ノエルをもっと痛めつけた状態で快盗の正体を明かさせた方が緊迫感はあったように思いますけど......。どちらにせよここで明かさなかったら「ノエルを殺す」というスタンスでいたから、こいつらが「絶対正体を明かす」と感付いていたんでしょうね。ザミーゴと快盗の因縁について理解していて、「こいつら最近焦ってるぞ」と知っている描写があったらもっと良かったような気がするけど。個人的には。

 

何はともあれ、ラスボスの手によって直接暴かれた快盗の正体。ノエルを人質にとっていたから間違いなく警察は現場にいるし、ザミーゴを除く関係者が全員その場に集っての「正体バレ」への持っていき方は素直に綺麗だと思いました。そして、その過程に警察→ジュレ組への疑いがあったからこそ、3人のあのような表情が見られたわけだし。それまでの過程とひとつの到達点として、十二分に正解であると評価したいです。

 

 

ゴーシュの敗因と、心すれ違う共闘

ボスの座を(名目上)降りたドグラニオによって、当初から幹部として君臨してきたゴーシュ・ル・メドゥは散ることになりました。ノエルとの因縁やこれまでの悪行を思うと、あまりにもあっけない展開。ラスボスが女幹部を刺すという展開は、脚本家が香村純子ということを念頭に置くと、どうしても『仮面ライダーウィザード』のメデューサ/ミサや、『動物戦隊ジュウオウジャー』のナリアを思い出しますね。ただ、個人的にはこの2作のキャラクターと、今回のゴーシュの敗因は似て非なるものだと思っています。

 

というのも、メデューサはワイズマンに、ナリアはジニスに対して絶対的な忠誠を誓い、彼の為に手足となって働く右腕的存在なんですよね。その忠誠の先に訪れたのが、不要であるから、あるいはその同情は侮辱行為であるから、切り捨てるといった冷酷な結末。いずれも絶対の忠誠を誓いすぎたからこそ、主君の心の内に気付くことができなかった、というのが敗因です。

一方、ゴーシュにはそのような「絶対の忠誠」は見られませんでした。ドグラニオ様という絶対的な悪の下、彼に1番近い場所に就いて上手く立ち回り、自分がやりたいことの為自由奔放に動く。もちろんドグラニオのことを尊敬はしていると思いますが、あくまで一番大切なのは自分自身であり、自分がやりたいことを1番に優先する。彼女にとってのボスは、そういったサバサバした関係なのだと思います。『タイムレンジャー』のリラとちょっと似てるかな。ドルネロみたいな温情はドグラニオにはないけれど。

 

だからこそ敗因は、自由にやりすぎたことに対する因果応報。「お前を自由にさせてきたんだから、こっちも自由にしていいだろ」というように、シンプルにツケが回ってきた結果なんだと思います。あっさりな死ではあったけど、どちらにせよいずれ辿るべき道だったんだな......。ゴーシュはドグラニオのことを少し甘く見ていたのかもしれません。

 

それでも最期までキャラクター性を守り切ったから、個人的には格落ちの死ではなかったかな~。ボスを甘くみてしまった自分を悔いながらも、「いいわ」と即座に切り替える。そして最期も巨大化して死ぬのではなく、実験体への金庫移植によってマッドドクターとしての自分を捨てず、盛大に散る。最期まで「自分」を貫き通して死んだゴーシュ・ル・メドゥというキャラクターは、主君に絶対の忠誠を誓うデストラとはまた違って魅力的な悪役でした。まあ、「自分」を貫き通したからこそ、餞の盃を交わしてくれる人はいないんだけどね。そういう切なさも含め評価したい。ゴーシュを見事に演じ切ってくださった竹達彩奈さん&蜂須賀さん、お疲れ様でした!

 

そして心すれ違う快盗と警察の一時共闘。今まで25話、43話、劇場版と何度か共闘はしてきましたが、正体を知った上での共闘は今までと違う切なさがありますね。後にも触れるつもりですが、特にパトレン2号のアクターを担当する大林勝さんの演技が素晴らしい。

 

 

心の底から信じてきた相手が快盗で、騙されていたんだという失望と、それに気づけなかった自分への悔しさ。様々な感情が溢れそうになりながらも、警察官としての使命を全うするために無言で協力を請ける。この一連の演技が、まんま陽川咲也の心情を表現していて、こちらも泣けてしまいます。特に肩の演技ね......。グッと堪えるようなパトレン2号のマスクの下で、咲也がどんな表情をしていたかと思うとつらい。

 

そしてロボ戦は安定して見応えあり。本当は両者ともにロボに乗ったら良いのにな~と思わなくもないですが、警察視点での戦闘に見応えがありました。ロボと生身が同時に映る画は『ゴーバスターズ』の頃でも十分凄いと思っていましたが、あれから8年、違和感なんて微塵も無いぐらい技術が進歩している.....。本当に「そこにいる」かのような巨大戦には満足です。

 

 

そしてそのまま「アデュー」と去っていく快盗と、静かに真実を噛み締める警察。その心境はいかに。次章では1年間での心の動きについて考察してみようと思います。

 

 

「快盗であること」を貫いた者達の覚悟

夜野魁利

兄を救えなかったことに対する後悔から、取り戻すためにひたすら快盗業を続けてきた魁利。しかし、シンプルに大切な人を取り戻したい他の2人とは違い、兄に対する憧憬と、その裏に潜む嫉妬の感情から、その内心はかなり複雑なものでした。

 

兄の夜野勝利はなんでもできる完璧な兄貴。そのため幼い頃は憧れの対象でかつ「なりたい自分」だったのですが、成長するにつれてその気持ちは歪な方向にねじ曲がっていきます。「どうして俺は兄貴のようにできないんだ」という気持ちから、次第に彼は兄を避けるようになり、やさぐれていきました。そして例の日、些細な事で兄貴に対して拒絶反応を示したことで、兄貴はザミーゴの手で氷漬けにされてしまった......。

 

魁利の胸中には様々な後悔があったと思います。そこに現れたコグレさんと、快盗業は唯一の救い。彼は兄貴を救うために快盗になり、ルパンコレクションの回収を次々と達成していきました。ここまでが第1話より前の話であり、警察がパトレンジャーという装備を手にしてからはより複雑になっていくのでした。

 

その一つが「朝加圭一郎」という人間との出会い。圭一郎は市民の安全を守るために戦う「正義のヒーロー」。そのブレない正義感には、完璧超人の兄貴と近いものがあり、魁利は圭一郎に対しても劣等感を抱いていくのです。5話では「これしか無いから快盗やってんだ!正論なんかどうでもいいね!」と自らのスタンスを示し、事あるごとに圭一郎とのズレを感じていきますが、決定的だったのは第30話。

 

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手段を選ばない快盗と、真っ直ぐに正義を執行する警察。その違いが、髪飾りをなくした女の子に対する魁利と圭一郎の対応を通して描かれました。 魁利はこっそり新しく買うことで、手早く解決し、女の子を喜ばせたい。見つからなかったら女の子はきっと悲しみますもんね。だから決して、間違った判断ではないです。女の子に対して嘘をつくという、その一点以外は。

だからこそ、女の子に真っ直ぐ向き合い、「真っ先に探す」という選択を迷わず選んだ圭一郎に対し、まぶしく、妬ましく感じてしまう。ここに快盗を選んだ魁利と、警察になった圭一郎の、精神的なあり方の違い、生き方の違いが示されています。

ここで良いなあと思ったのは、魁利が「負い目」を感じてしまった点。前々から熱血おまわりさんのことを疎ましく思っているようでしたが、ここまではっきりと、自分の選択への罪の意識だったり、自分は「正義のヒーロー」にはなれないという疎外感だったりが描写されるのは初めてです。今回の一件と、5話における「これしかないから快盗やってんだ!」が活きてくれば、正体バレの際に確実に大きなドラマが起きると思いますし、そのまだ見ぬカタルシスに期待が止まりません。

快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー 第30話「ふたりは旅行中」感想 - ヒーローズ・ログ

 

自分のブログからの引用で恐縮ですが、この女の子に対する何気ない対応で、魁利と圭一郎の違いがハッキリと描かれました。決して魁利のやり方は間違っていないんです。だけど、真っ直ぐに向き合った圭一郎の方が先に女の子の下に辿り着いてしまった。この眩しすぎる正義感への嫉妬が、兄貴に対する心情と同様の形で描かれ、以後もルパンマグナム回の34話、強制帰宅ビームの37話と深められました。

 

魁利は以前つかさ先輩によって「ブレーキが壊れている」と評されたことがありますが(24話)、これがその通りだと思ってまして。「自分にはもうこれしかない」「兄貴や圭一郎のようにはなれない」。そういった諦観と歪な「覚悟」があるから、命を惜しまない行動をとる。だからこそ「快盗に向いている」と評され、唯一ルパンマグナムの試練を勝ち取ることができたのです。

 

そんな嫉妬の感情を圭一郎に向けていた魁利でしたが、一度は彼を許すことができました。そしてそのまま「正体バレ」に持ち込まれた。つまり未だ、正面から圭一郎とのぶつかり合いは為されていません。とっくの昔に決めてきた「覚悟」があったから、今回姿を見せることができた。しかし、あの「笑み」を見るに、正体を明かしたとはいえまだ快盗の「仮面」を取ることが出来ていないと思うのです。圭一郎と正面からぶつかり合い、「仮面」を取った時に本当の「正体バレ」回が訪れる。そしてその場面こそが、『ルパパト』という作品の一番の旨味だと思います。「君の力になりたい」。またしても自分との違いを見せつけられそうな魁利は、圭一郎に対してどんな言葉を、感情をぶつけるのか。注目していきたいです。

 

 

宵町透真

快盗と警察の中で、最も相手側との関わりが薄い透真。距離感を保ち続けた透真にとって、警察に正体を明かすという行為は「コレクション集めにリスクが伴う」以外に一見無いように思います。

しかし、第3話を思い返してください。当時の透真は、警察と関わり合うこと自体に強く反対していました。その時、利用すれば作戦の幅が広がるという魁利の言葉を受け、その場は納得しましたが、警察と深く関わることはやめておけという忠告は、たびたび魁利と初美花にしてきました。

 

でもその内、ジュレでの魁利と初美花、警察の面々との関わり合いを通して、徐々に警察の存在を認めていきます。「あいつらが笑顔なら......」と書くとお父さんっぽいですが、当初1人欠けても願いのためにと考えていた透真が、警察との関わりの中で仲間に対しての愛情も湧いた。警察であるつかさ先輩の前でそれを認めるくらいにまで。当初と比べると、かなり成長を見せたキャラクターなんじゃないでしょうか。

 

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初美花に対して「いいのか?」と真っ先に声をかけた辺りにも、仲間への想いに溢れていますね。彼に関する警察とのドラマはまず無いといっていいでしょうけど、魁利や初美花にこの先訪れる困難をどうか優しく見守り、時に助けてあげてほしいと思います。そしてどうか彩さんと再び結ばれる日を。

 

 

早見初美花

正直快盗と警察のドラマは、魁利と圭一郎のドラマに重きが置かれると思っていたので、初美花・咲也の関係にここまで比重が置かれるとは思っていませんでした。だけど一番感情移入がしやすいのは確か。咲也を騙していたことに対する後悔や、二度と顔を合わせることのできない彼への想い、本人は無自覚のようですけど失恋の感情も含め、物語的に見応えのある関係だなあと、改めて感じました。

 

初期の頃、しつこくナンパしてくる咲也に対し、初美花は良い感情を抱いていませんでした。第7話の時なんて何の気持ちもなくただ利用していたし、ジュレに普段来た時も引き気味でしたね。まあ、咲也の距離感がやたら近いのでしょうがないんですけど。褒められて伸びるタイプの後輩のくせチャラい。

 

それが警察と関わるうち、徐々に変化していきます。決定的だったのは、ノエルが咲也と初美花の距離を近づけようとした第22話。この時、咲也が身を挺して戦ったことで「良い人」と認めるのでした。咲也はこの言葉にしょんぼりしましたが、初美花の中では確かに彼の評価は上向きになっていたのです。

 

その後もたびたび咲也の純粋さに惹かれる描写があり、第46話ではほぼ明確な好意を向けていることが描写されます。本人は「それはないよね」という感じでしたが、第三者から見てもあれは恋してるよね。第47話で咲也を騙していることに心を痛め、ザミーゴ撃破に急いだのがその証拠。また彼が自分を信じていることに気付けたのも、彼への好意や信頼があったからであるのは明白です。

 

最後に正体を明かすか否か迫られた時に、詩穂ちんが凍らされた日を連想したのは、全世界を敵に回してでも友人を取り戻そうという覚悟の現れだと思います。あの瞬間、咲也はもちろん、自分を溺愛してくれる父や、その他友人達も裏切ることになりました。例え詩穂ちんを取り戻せたとしても、彼らの信頼を取り戻すのは難しいでしょうし、全世界に公開された以上どこに行ってもバレてしまう。しかしそれでも、友人を救うためなら、という重い決断でした。高校生が背負うことじゃない。どうか、咲也が彼女を信じ、救ってあげてくれたらな......と願います。

 

 

余談ですが、つかさ先輩との関係については、第13話、てれびくんDVDとやってきた割には少し薄く感じますが、まあつかさ先輩の人間性とかスタンスを考えれば納得できる。透真同様、あまり私情に足を突っ込まないタイプだもんね。 

 

 

高尾ノエル

彼は魁利達と違い正体はとっくに明かされていたし、救われた側なんですけど、一応快盗側として触れます。主に、彼が今後どのように動くのかという点について。

 

異世界の住人であることを隠し、アルセーヌを救うために孤独に戦ってきた男、高尾ノエル。彼も快盗同様、正体を悟られぬように立ち回ってきました。誰にも悟られずに、ただひたすらアルセーヌを救おうと必死になって戦った彼が、ようやく快盗・警察のそれぞれの立場で信頼できる仲間を手に入れたというのに、その矢先にギャングラー達に利用され、心も体も壊された第43話以降はただただしんどい展開でした。

 

信頼された先で彼が選択したのが、警察の盾となること。まあこれにはギャングラーの本拠地に乗り込めるという打算やらもあったとは思うのですが、基本的には自分を信じてくれた圭一郎達を死なせはしないという自己犠牲が核にありました。でもその結果、ドグラニオの策によって快盗の正体が明かされてしまった。この結果を彼が軽く見るわけがありません。感謝した上で、この借りをどのように返すのか。彼の性格を考えると、また自己犠牲を選んでしまうんじゃないか......と心配になります。

 

ドグラニオとの因縁を果たし、アルセーヌを生き返らせるまで生きていてほしいものですが、正直なところ死線が見えてしょうがないです。どうか追加戦士あるあるの「終盤で散る」フラグを打ち砕いてほしい。

 

また来週の見所で言えば、咲也との問答が気になります。思えばノエルは正体を知っていながらずっと隠していたわけですもんね。いくら理由があったとはいえ、普通の人生を送ってきた青年達を危険なことに巻き込んだ罪は重いし(張本人はコグレさんだけど)、ましてや警察の立場でそれをやっていたわけですから、不信感を持たないわけがないです。次回、怒りの咲也に対しどんな言葉をかけるのか。

 

 

 

 

警察として、友人として

朝加圭一郎

続いて警察。当初、「正体バレ」は快盗側の大きな壁になると思っていたので、警察側の方にここまで重くのしかかることになるとは、というのが率直な感想です。中でも、真実に真っ先に辿り着いた圭一郎にとって、この壁はかなり大きい。とはいえ、きっと彼なら真正面からぶつかり、こじ開けてくるのでしょう。

 

彼のキャラクターは「絶対の正義」を体現する光属性で、最初から完成しきっていました。その文言だけ見ると昭和の熱血漢をイメージするし、実際その通りではあるんですが、それだけでなく他人を慮り、多様性を尊重する一面まであるのが朝加圭一郎。だからこそ魁利の心に劣等感を持たせるんだけど、圭一郎はこの劣等感に絶妙に気付かないという。

 

これまで1人の青年として心配し、時には警察官としての職務以上に私情で関わってきた魁利くん。一方、正義に反する手段に反発しながらも、時に協力し、いつしか奇妙な信頼関係を持ったルパンレッド。この2人の人物が一致した時、彼は何を思い、どう動くのか。

 

第46話で、友人として以上に、警察として対処しなければならないと咲也を窘めていましたが、その際彼には迷いが見られました。友人が正体であったとしても、その手段は間違っている。第5話からたびたび否定続けてきた以上、この言葉を覆すわけにはいきませんし、簡単に赦すわけにもいきません。しかし、快盗業を始めた背景に浮かぶ「大切な人を救う」という目的。これも放っておくことはできない。警察として、友人として、そこには様々な葛藤があると思います。

 

それを超えた先で発した「君の力になりたい」という魁利に対する言葉。これにはどんな思いが込められているのか。魁利→圭一郎の感情の動きはこれまで幾度とみてきましたが、圭一郎側から見た魁利/ルパンレッドの姿と、警察、または友人として出した答えは見逃せないポイントですね。

 

 

陽川咲也

今回の件が最も大きな壁として立ちはだかることになったのは、咲也です。第46話、第47話でジュレの3人組が快盗だと疑う先輩達に反発し、先陣を切って初美花とのデートに漕ぎ付けましたが、信じた先にあったのは非情な真実でした。「良い人」だからこそ、今回の結果にショックを受けないはずがない。

 

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ただ、正体を明かした際に彼は「どうして!」と叫ぶようなよくあるパターンを取っていないのがポイントだと思っています。「そんな......」という言葉には、「やっぱりそうだったんだ」という思いもあったのかなと。彼は私情を優先してしまいがちなタイプですけど、警察の職務を全うするという、職務に対する責任感とプライドを持ち合わせる、1人の警察官でもあります。「良い人」としての彼は彼女を信じていたけれど、警察官としての陽川咲也はどうしても初美花への疑いを消すことができなかったんじゃないかと。だからこそ「そんな......」という言葉を静かに吐いたのではないかと思います。ここの横山くんの演技、涙腺に来たなあ。

 

その後の初美花に対する接し方は前述の通りですが、彼はこの後初美花の助けになろうと動いてくれるのか。一度裏切られた彼女の心の内に気付けるのか。圭一郎と魁利の関係同様、注目ポイント。彼ならきっと、彼女の心を救い、親友を助けてくれる。警察官として、また「良い人」として。そう信じてます。

 

 

明神つかさ

透真同様、つかさ先輩も今回の発覚で負ったダメージは少ないポジションだと思います。しかし、何気にジュレの3人と満遍なく関わったのは彼女でした。

 

魁利との関係は第24話。前述の「ブレーキが壊れている」回ですね。魁利を一人のお姉さんとして心配し、優しく接していたけれども、彼が抱えていたのは快盗業であり、まさしく彼が「ブレーキが壊れている」ルパンレッドでした。

 

透真とは第41話、初美花とは第13話でそれぞれ関わっており、普段のジュレでの関係も含めて、色んな形で3人とふれあってきた描写が見られました。だからジュレの3人組に対する失意はあるでしょうが、魁利の件も含めて、失意よりも心配が勝っているのではないかと。

 

といっても彼女からジュレ組へのアプローチは、他2組に比べたら特に無いだろうな。それよりも、圭一郎、咲也に対するフォロー役に回るのではないかと思います。静かに決意を固める圭一郎と、ショックで立ち直れない咲也に対し、つかさ先輩らしい冷静な言葉を投げかけ支えてやってほしいところです。

 

 

 

以上、第48話の感想もとい快盗・警察達の胸中に関する考察でした。正直、キャラによって偏りがある考察になってしまった感は否めないですが、実際比重はあるのでお許しを。

 

当初考えていた展開よりも、ビターに胸に迫る展開で「正体バレ」に漕ぎ付けたルパパト。残る敵はザミーゴとドグラニオ。そして彼らを倒すには、2組の感情のぶつかり合いが肝となってきます。本当の意味での「共闘」が訪れ、彼らは世界を、大切な人を救うことができるのか。泣いても笑ってもあと3話。一瞬たりとも見逃さずに、彼らの答えを目に焼き付けましょう。

 

 

 

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