零れ落ちる前に。

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快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー 第30話「ふたりは旅行中」感想

『快盗戦隊パトレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』、略してルパパト。毎週楽しく観させてもらってます。

 

 
現在までの自分の感想をひとことで言うと、「非常に関係性に力を入れた戦隊」だなぁという印象。前回のキュウレンジャーはどうしても人間関係に比重を置き切れず、一部キャラクターを持て余してしまった印象が強かったので、その反動なのか、快盗と警察の対立関係や、各戦隊内での関わり合い、追加戦士ノエルの位置づけ方などなど、密接に、緻密に絡め合うことに力を入れている作品ですね。
 
私自身も、トッキュウジャーやジュウオウジャーなど、キャラ重視の戦隊がとても好み。というか、戦隊の利点ってライダーと比べて「多人数」「チーム」なのが一番良い部分だと思うんですよね。レッドが主役!って雰囲気の戦隊もちょこちょこありますが、チームで色んな掛け合いがある方が魅力的に感じます。
 
その点、ルパパトはまた特殊で、チーム内の関係だけでなく、戦隊同士の対立構造まである。これ、絶対どちらかに比重が偏ってしまい、ルパンの方が人気!ってなってしまう難しいことだと思うんですが、その辺りは流石香村脚本。ルパンもパトも両方が好きになれるよう、上手く描き分け、絡め合うことができています。
 
25話なんか美しかったですよね。共闘っていったら、正体バレまで取っておくのかと思いきや、ライモンの脅威を止めるという利害の一致で共闘させるという。ルパンはゴールドステータスのライモンに対し、2つのロックを開錠しなければならないため、人手が足りない。パトは3人で立ち向かうも、全く歯が立たない。今は共闘を選択し、金庫の能力を排除してもらった上で、7人の力で対処すべきだ!そう判断したのがつかさ先輩というのが良いんですよね...。合理的な手段を選択できる冷静なつかさ先輩の発案、そしてそれに納得する咲也、選択を渋りながらも、市民の安全を優先して悔しそうに同意する圭一郎。この一瞬でも警察側のキャラを描き分けている。その手腕に感動すら覚えました。
 
 
そんな流れもあっての30話。圭一郎と魁利の対比構造がまたもや光るお話でした。
 
 

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〇髪飾りの一件が暗示する、快盗vs警察
 
手段を選ばない快盗と、真っ直ぐに正義を執行する警察。その違いが、髪飾りをなくした女の子に対する魁利と圭一郎の対応を通して描かれました。
 
魁利はこっそり新しく買うことで、手早く解決し、女の子を喜ばせたい。見つからなかったら女の子はきっと悲しみますもんね。だから決して、間違った判断ではないです。女の子に対して嘘をつくという、その一点以外は。
 
だからこそ、女の子に真っ直ぐ向き合い、「真っ先に探す」という選択を迷わず選んだ圭一郎に対し、まぶしく、妬ましく感じてしまう。ここに快盗を選んだ魁利と、警察になった圭一郎の、精神的なあり方の違い、生き方の違いが示されています。
 
ここで良いなあと思ったのは、魁利が「負い目」を感じてしまった点。前々から熱血おまわりさんのことを疎ましく思っているようでしたが、ここまではっきりと、自分の選択への罪の意識だったり、自分は「正義のヒーロー」にはなれないという疎外感だったりが描写されるのは初めてです。今回の一件と、5話における「これしかないから快盗やってんだ!」が活きてくれば、正体バレの際に確実に大きなドラマが起きると思いますし、そのまだ見ぬカタルシスに期待が止まりません。
 
 
 
〇似てんじゃねえよ、めんどくせえ
 
今回圭一郎に対して負い目を感じた理由のひとつに、兄の行動に似てたからというものがあります。魁利の兄の描写は、9話のエマさん回でもありました。魁利は兄の正義感の強さに憧れ、一方で嫉妬しています。そしてそんな自分の気持ちが、ザミーゴによって兄を失うという悲劇を起こした。魁利の心を曇らせてしまった原因です。
 
圭一郎は、そんな兄の生き方と似ている。今回初めてそれが描写されました。似てるからこそ「めんどくせえ」し、その姿にまぶしいと思うからこそ、自分の快盗という選択が、兄と圭一郎2人に対して、「間違ってるな」「ズルいよな」「真っ直ぐな正義ではないよな」と感じられる。思わざるをえないという。こうして、またもや魁利は自己否定の渦に飲み込まれてしまうのです。
 
これは私の予想ですが、魁利は「ザミーゴにやられるのは兄貴じゃなくて俺で良かった」とも心のどこかで思ってると思うんですよね。「きっと兄貴だったら、圭一郎のように正しい道を選び、助けるという選択をする。それと違って俺は...」だったりとか、「俺なんかより兄貴の方が、生きてる価値のある人間だ」とか...。だから、もし快盗を続けた結果、「兄貴は助からない」「願いはかなわない」ということになったら、魁利はかなりの絶望を抱いてしまうでしょう。ニチアサだしないでしょうけど、自殺を選ぶくらいの精神状態になると思うんですよね。実際、今の段階でもそんな風だし。ただおそらく、展開的には「生き返らない」方になると思うので、その時に「それでも生きる」という選択をできるような希望があれば....。その辺を警察側との関係性も活かして、描いてくれたらなあ...って思います。楽しみだけど怖えよ~!!!
 
 
〇圭一郎の「新たな選択」
 
今回もう一つ感心したのは、圭一郎の心境の変化です。魁利側の描写が多かったですが、圭一郎にも注目すべき点があったように私は思います。
 
というのも、コレクションを取り返さず、市民の安全を優先して、快盗にギャングラー破壊を任せるシーン。魁利が「めんどくせえ」と感じた理由のひとつでもあります。この際、圭一郎の「市民の安全優先」「正義を執行する」というスタンスは全くブレてないのですが、そこに「手段を選ばない」という要素が新たに加わったのです。
 
圭一郎は警察側で、一番快盗を許さないというスタンスにあります。なぜなら、「それを選んだ時点で間違ってる」から。ですが、6話でルパンレッドにコレクションをもらったり、25話で快盗と共闘したりするうちに、「こいつらになら任せても良い」という思いが少なからず生まれてきているのです。25話ではつかさ先輩に諭されて共闘する、という流れでしたが、今回は無線でつかさ先輩から報告を受け、自ら快盗に任せる道を選択。「ここからなら俺のパトカーよりお前の飛行機の方が速い!」と、ルパンレッドに任せるのです。そこに、わずかではありますが、圭一郎の心境の変化が見られました。最後に「よく圭一郎さんのお願いを聞いてくれましたね!」とジムに言われた時も、「何となくだが、そこは信じられる気がしたんだ」と答えてましたし。
 
まあそれが、余計に魁利の心を曇らせることになってしまうのですが...。とにかく、圭一郎のルパンへの考えも、正体バレ回に活かされてほしいなあと思うのでした。
 
 
〇消臭のコレクションと臭すぎる敵
 
さて、最後に今回のギャングラーについて。巷でも言われていましたが、コレクションが自分の力を強化するのではなく、打ち消す方向に働くってのは初めてで面白かったですね。あと、臭いのギャグでなんとなく打ち消されてましたが、あの可燃性ガス強力すぎてやべえ。コレクションで能力を打ち消す一方、隠れ蓑にするという効能も。何とも恐ろしい奴です。
 
つかさ先輩が「快盗!早くコレクションを元に戻せ!」などと言ってたのもツボでした。
 
 
以上、ルパパト30話でした。2人の温泉珍道中なギャグ回と思いきや、かなり重要回に。ますます終盤が楽しみになってきました。温泉旅行の楽しそうな2人ももっと見たかったので、いつか仲間になったら、一緒にいってほしいなあ
 
それでは。