零れ落ちる前に。

その時々感じたことを、零れ落ちる前に。

仮面ライダージオウ LAST「2019:アポカリプス」感想

 

『ジオウ』、そして平成ライダー最後の朝がいよいよやってきました。この事実だけで泣ける。高岩さんの主演も最後ということで、俄然「平成最後の日」という趣があります。世間的には4月30日だけど、俺達にとっては7月26日と8月25日なんだよな。

 

また、前回の展開からして、本当に終わるのか!?というドキドキ感があるのは久しぶり。近年の『エグゼイド』や『ビルド』は比較的終わりに向けての準備が早かったので、1期や2期初期のライダーを思い出す朝です。今や伝説の最終回と謳われる『オーズ』も、テレビの前で戦々恐々とした記憶があります。何か懐かしいなぁ。これもひとつの平成ライダーらしさ。

 

平成ライダー最後の1ページ、目映い世界を魅せてくれ!

 

 

 

 

世界の崩壊を止める道

EP48から実行された、門矢士による「世界を破壊する」計画。その鍵となるのは、ツクヨミの変身でした。スウォルツとツクヨミの世界に仮面ライダーを生み出すことで、「ジオウの世界」と「ツクヨミの世界」に架け橋を作り、前者の世界の人々を後者へと逃がす。壊れるのはあくまで「ジオウの世界」だけであって、他のライダーの世界も救われるという算段です。

 

地球と地球を合わせるやり方は昨年の『ビルド』を思わせますが、あちらはA世界とB世界の同一人物を融合させ、1つのC世界を創造するという方法。今回の『ジオウ』は、士の話を聞く感じだと、合体するわけではなさそうですけどどうなんでしょうか。人口2倍になったら食糧難をはじめとした色んな二次被害が勃発しそうだし、結局は融合するのかな。

 

とにかく、世界の破壊と世界からの脱出という「第4の道」を選ばなければ、スウォルツの言うがままになり、終焉を迎えてしまう。何としてでも達成させなければならない...という所で、ツクヨミによる裏切りが起きてしまいました。意外すぎる人物の裏切りに一同騒然。スウォルツでさえも意外そうで、すべてにおいてツクヨミの独断のようです。スウォルツ氏の高笑い、超楽しそうだったな。

 

 

結果的に彼女は裏切っておらず、スウォルツを暗殺するための作戦でした。しかし、その計画をソウゴに伝えておらず、彼がオーマジオウになる事を認めてしまったのは事実。最後の遺言を聞くに、彼女は「ジオウの世界」を破壊して逃げるという事が嫌だったのでしょう。

 

ソウゴやゲイツ、ウォズと共に戦い、苦しみ、けれども笑い合ってきた世界。彼女は自身の故郷となる世界よりも、こちらの世界を好きになってしまった。ソウゴに自分を救う道を選ばせるくらいなら、自身の命を引き換えにして、2つの世界を救いたい。彼女の意図する通り、消滅とともに世界は1つに融合したのでした。

 

そんなに多くは描かれませんでしたが、EP28のソウゴとの和解や、EP32でソウゴに見せた笑顔などから、彼女のこの世界に対する想いが読み取れます。ひとりで勝手に決断した事が悪手なのは間違いないですがゲイツくんを死なせる一因にもなったし)、彼女なりの思いやりだったんじゃないかな。もし補完する機会があるというのなら、ツクヨミ視点での『ジオウ』も見てみたいものです。

 

 

東映ヒロインMAX PREMIUM (タツミムック)

東映ヒロインMAX PREMIUM (タツミムック)

 

 

 

グランドジオウvs悪の親玉

「『ジオウ』の終わりでもあり、平成ライダーの終わりでもある」と思いながら視聴に臨んだ本日ですが、一番「終わり」を実感したのが、グランドジオウの変身シーンでした。歴代ライダーの変身音が連なる変身待機音と、豪華な「平成ライダーソング」、そしてソウゴの後ろでメッキが剥がれる総勢20人の仮面ライダー達。派手な絵面は初登場のEP40でもやってくれたことですが、最終回でもフル尺で見せてくれました。

 

上空から登場したライダー達がスウォルツを翻弄した後、決意に満ちた変身を果たします。奥野くんの顔付きが本当に良くて、「彼こそが平成ライダーを背負う男だ...!」と、派手な絵面と共に号泣。

 

 

仮面ライダージオウ DXグランドジオウライドウォッチ

仮面ライダージオウ DXグランドジオウライドウォッチ

 

 

また、奥野くんの演技で良かったところを挙げると、おじさんとのシーンを外すわけにはいかない。最後の食事シーンで、決意やら罪悪感やらを複雑にブレンドした表情で言葉少なくご飯を食べるソウゴと、悲しそうな目をするおじさん...。家族ということで、2人のシーンはこれまでも何度かありましたけど、今回は特にグッときましたね。奥野くんの演技力の上達が、2人の掛け合いを通して伝わってきました。

 

生瀬さん演ずる順一郎おじさん、1年間ブレずに良きおやっさん枠として収まってくれて良かったなあ。一般人代表として、コメディ担当として、時にドラマにちゃんと介入してくるおやっさんとして。またはライドウォッチを修理してくれる優秀なサポーターとして。まるで平成ライダーシリーズの「おやっさん」達を集約したかのようなキャラクターでした。

 

 

 

「どんなに歴史が壊されても、仮面ライダーは壊れない!」

 

ソウゴの言う通り、ライダー達が暴れまわります。変身前に登場したビルドタンクタンク、ドライブタイプフォーミュラ、ゴーストオレ魂、エグゼイドマキシマムゲーマーは激しくアナザーディケイドを翻弄し(特にマキシマム強い(笑))、変身後はオーズタジャドルコンボ、ウィザードインフィニティースタイル、ダブルCJX、そして謎の鎧武パインアームズがガンガン攻める。今までアナザーディケイドにやられっ放しだった分爽快です。

 

ただ、夏映画とは差別化を図りたかったのか、集合は2期ライダーのみ。どうせならフォーゼも呼べばキリが良かったのに...。パインについても何故なのか。裏方の事情がちょっと透けて見えたのが残念でしたけど、実際並ぶと絵面が楽しいですね。 

 

敵として登場したのは、錚々たるメンツ。ユートピアドーパント仮面ライダーエボル、ン・ダグバ・ゼバ、ゲムデウス、サジタリウス・ゾディアーツ。ラスボスたちの中でも特に印象に残った強者たちです。春映画で雑な扱いがされがちな悪役達ですが、今回に関してはなかなか考えられたチョイスだと思いました。スウォルツよりも強いでしょこいつら。

 

特にエボルトは昨年のインパクトが強く、出てくるだけで絶望感が違います。ダグバも鮮烈すぎる印象が残っていますし、この2人だけで世界滅ぼせる。圧倒的な闇の力を前には、最強フォーム軍団を率いても敵いません。

 

 

 

オーマジオウ降臨!

最高最善の魔王になる事を願った時から、選んではいけない道だったオーマジオウの道。友の死をトリガーに、ソウゴはその選択を取ってしまうのでした。怒りから生まれた圧倒的な破壊のエネルギー。スウォルツや復活したラスボス達を簡単に跳ね除けてしまいます。

 

前回の記事でも書きましたが、ゲイツが「オーマジオウの道」を託すという結果になったのが、皮肉が効いてて良い展開です。あれほど止めようとした方法だけど、今のソウゴならきっと大丈夫。その信頼があったわけですね。スウォルツの攻撃からソウゴを庇い、散っていくゲイツくんの姿は、前回のチェイスだったり、平成ライダーの歴史でいえばやはり『龍騎』が浮かびます。

 

最も信頼できる男に未来を託して散る。王道ながら熱い展開です。押田くんも非常に力が入っていたようで、全身全霊を賭けて思いを託す姿に、また涙してしまいました。一瞬ながら、ゲイツリバイブのマスク割れも超カッコ良かった。

 

「幸せだったぞ、この時代に来て。ソウゴ...。お前の仲間に、友になれて。」

 

EP16での激突、EP28での友達宣言、EP46の「失われた可能性の世界」内での「新しい未来を作っていきたいんだ!」という告白。『ジオウ』の歴史は、ソウゴとゲイツの歴史でもありました。その終着点が、片割れの死というのは何と悲しいことか。しかし、当初の対立関係からこういう帰結になるのはある意味必然的で、美しい。最後の最後に2人のベストシーンを見る事が出来て嬉しいです。

 

 

仮面ライダー公式アーカイブ FIGHTING TIME ジオウ×ゲイツ

仮面ライダー公式アーカイブ FIGHTING TIME ジオウ×ゲイツ

 

 

 

さて、2019年の世に君臨したオーマジオウの能力とは如何なるものか。変身からその圧倒的オーラが噴出していました。奥野くんの声質の変わりようにも驚きましたが、ソウゴの後ろに現れる巨大な魔法陣のような何かがまさに地獄の様相で、最早地面からマグマが溢れています。

 

「変身!」という叫びに呼応して、マグマがソウゴの元に集い、地面に刻まれた「ライダー」の文字が、顔面に突き刺さる。「ラスボス」に相応しいオーラです。

 

 

「祝福の刻!最高・最善・最大・最強!オーマジオウ!」

 

 

小山力也氏の音声もおどろおどろしい。個人的には「最高最善って言っちゃっていいんだ」と思いましたが、ソウゴの思いに呼応したものなのかと思うと、それはそれで美味しい。

 

ウォズに対して「祝え」と命令するシーンは、『バトンタッチイベント』にて渡邉さんが「1話のオマージュ」と明言されていましたね。「は?」とウォズが戸惑うシーンも同様ですが、あの時とは真逆の動揺。

 

飄々としたソウゴに惚れた男が、オーマジオウと同じように命令してきたのに困惑したのか、今回の誕生が想定外だったのか。少なくとも「逢魔降臨暦」には載っていなかったようです。

 

仮面ライダージオウ「逢魔降臨歴」型CDボックスセット(CD5枚組)

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「俺の力は、全てのライダーの力だ!」と取り出したのは、全ライダーのウォッチ。番組内で継承したウォッチだけでなく、王蛇やエターナル、グリス、ダークキバ、ギャレンなどなど、あらゆるライダーの力がオーマジオウの元に集っています。そりゃ強いわけです。親玉達を一網打尽にし、上空に浮かぶ怪人達も一瞬で消し去ってしまいました。ライダーの歴史を侮ってはいけない。

 

スーツ自体の存在感も元々王者らしく威風堂々としていましたが、柴崎監督の演出でさらに深みが増しました。そして中に入った高岩さん。オーマジオウとして、Mr.平成ライダーとして最後のライダーキック。非常に美しく輝いていました。

 

奥野くんと高岩さんが二人三脚で演じた仮面ライダージオウ。相手をしたアナザーディケイドやその他のラスボス達。ジオウ最後の覚醒を神々しく演出された監督をはじめとするスタッフの皆さん。皆さんのお陰で、平成ライダー最終回に相応しい素晴らしいラストバトルでした。

 

 

 

時計の針は未来にしか進まない

最終回、尺不足が否めないところはありましたけど、最後の最後にソウゴが告げた言葉によって、物語が上手く締まったように思います。

 

彼がオーマジオウの力で新たな世界を創造したことで、これまでの物語はリセットされ、時は2018年の9月に戻りました。時代もまだ平成。世界の崩壊は勿論起きていません。

 

EP1と全く同じ形で登校する「普通の高校生」常盤ソウゴの周りに集うのは、意外な人物たち。ゲイツツクヨミ、ウール、オーラと、同世代ながら同じ立場として交わる事の無かった彼らが、笑い合いながら平凡な日々を過ごしていました。これまでの戦いの記憶が無かったことになったように。

 

 

しかし、ソウゴが以下のように告げたことが、「物語の消失」を否定しています。

 

 

「時計の針は未来にしか進まない。ぐるっと一周して元に戻ったように見えても、未来に進んでるんだ」

 

 

過去に戻ったように見えても、未来に進んでいる。このような未来への前向きな指向性こそが、常盤ソウゴの強みであり、だからオーマジオウでも無しえなかった新世界の創造が出来たのです。だからこの作品のエンドは「ループもの」のような物悲しさはあまりなく、爽やかな後味を残していきました。

 

 

『ジオウ』という作品の形としてのラスボスはスウォルツでしたが、実際のところ、時間や運命といった「抗えないもの」がラスボスだったのでしょう。そしてそれは、これまでの平成ライダーが同様に立ち向かってきたもの。20作品をまとめる代表選手として、改めてその壁にぶつかり、打ち破った。かなりの力業ながら、見事に壁を切り拓く姿は、ライダー代表としても、1人のヒーローとしても輝いていました。

 

当初はBAD ENDを想定していましたし、途中まではそれを確信していましたけれども、上手く着地してくれて良かったな。や、まあかなり無理矢理で、着地大成功!とは思いませんけど、ソウゴの物語の着地にこんな台詞を持ってこられると許さざるを得ませんでした。夏映画の「瞬間瞬間を必死に生きてるんだ」と同じくらい、彼の真っ直ぐな生き様を端的に表していて、無理くりな「創造」にも笑顔で納得するしかなかったんですよね。

 

常盤ソウゴの物語、ひとつの帰結として素敵な最終回だったと思います。またいつか、未来で。

 

 

仮面ライダージオウ VOL.11 [DVD]

 

 

というわけで、『仮面ライダージオウ』を1年間完走することができました。平成ライダーも一応完走です(まだ観れてない作品もあるので「一応」)

 

SNSでは否定的な意見も沢山見受けられましたし、まあ実際そうなってもしょうがないよなあとも思いますけど、個人的には初見の時点で結構刺さっちゃって。ああ、ちゃんと終わったなあ、とジオウロスで心がぽっかりと空いちゃってます。

 

レジェンドが沢山登場するお祭り作品としても楽しかったですが、ちゃんと『ジオウ』の物語があった所が非常に好感触。ソウゴ、ゲイツ、ウォズ、ツクヨミ、オーマジオウと魅力的なキャラクターが並び、彼らと会えなくなるのが本当に寂しくなってしまうほどに、物語にのめり込んでいました。『ディケイド』が成し得なかった事を10年越しに達成したという意味でも感動です。...なんてことを、近々『ジオウ』総括記事で書こうかな。しばしお待ちください。

 

 

次週から始まる『ゼロワン』。『エグゼイド』と同じ高橋悠也さんがメイン脚本なのでハマること間違いなし。ただ、感想記事を続けるかは迷いどころ。現状は2週に1回にしようかなという考えです。

 

 

ま、今後のことはともかく、ひとまず筆を置きまして...。

 

 

仮面ライダージオウ』、そして平成ライダーシリーズ。全ての作品と、それらに関わった皆さまに感謝を込めて。

 

今まで本当にありがとうございました!